第1428夜 【パパとドライブ】

【パパとドライブ】
福音館書店 こどものとも 通巻735号 2017年6月1日発行
山口稔子 文
まるやま あやこ 絵
画像

運転席と助手席というのは、親密な関係を築きやすいスペースであるというのは、かつての同僚の持論です。
だから、職場の同僚を乗せてあげているうちに恋が芽生えた、ということはよくあるというのです。
まずいのは、どちらかが、あるいはどちらともが既婚の場合であるとも。
一回り以上年上の同僚が、まだ未婚だった私に、忠告の意もあって話してくれたのかもしれませんが、幸か不幸か、自分の事で役に立つ機会はありませんでした。

私も彼の考えには同意します。
ただし、ロマンスということだけではなく。

私が思うに、ふつうの乗用車よりも、軽トラックのほうが、人間関係は一層深まるようです。
より狭い、つまり、距離が近いですから。

田舎へ行くと、非常に高い確率で軽トラを見かけますが、そのほとんどには老夫婦が乗っています。
(私の両親もそうでした。)

好むと好まざるとにかかわらず、狭い空間に二人きり、くっついて座っていれば、何かしらの会話をします。
たとえ口調はぶっきらぼうでも。
コミュニケーションは人間関係の基本ですから、つながりは強くなるのが自然でしょう。

かつて一緒に仕事をしたオーストラリア人は、日本中を旅しながら写真を撮ってはステキなアルバムを作っていました。

ある時それを見せてもらうと、軽トラに乗った老夫婦の写真が何枚も貼ってありました。
どうしてそれが被写体として魅力あるものなのかとたずねると、
「軽トラに乗っている老夫婦が、どんな絶景よりも美しい日本の風景だと思います。」
と彼女は言いました。

ことばそのものだけでなく、違う〝目”を持つ彼女自身にも感動したものです。


さてさて、絵本の話です。

表紙の愛らしい女の子、〝みかちゃん”は、酒屋であるお父さんの配達のお手伝いをして、色々なお店や家を訪れます。

配達先でいろいろな人に出会うエピソードが生き生きと描かれていますが、何といっても印象的なのは、車中の二人です。

見開きの、助手席の〝みかちゃん”。
迫力ある大きさの横顔を見て、読者の私も軽トラの中にいる気持ちになりました。

もらったラムネのお菓子を、車の中で、二人分け合って食べている嬉しそうな表情。

圧巻は、山道を下りながら窓を開けた時の、二人のボサボサ頭です。
風で髪の毛が踊りまくり、顔にまとわりついています。
二人はお互いを見て大笑い。
なんて幸せな時間でしょう。

「ドライブ」というと、ちょっと気取って聞こえますが、〝みかちゃん”の言う通り、
「車に乗ってお出かけすることをドライブっていうんだよ」
なんですよね。

私も、夫や子どもたちを助手席に乗せて運転している時間が好きです。


まるやまあやこさんの絵本は、第951夜、第1384夜でも紹介しています。

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