第1380夜 【か・げ】

【か・げ】
ポプラ社 2014年4月発行
武田美穂
画像

お話を読み始める前に、絵を見ただけで、なんだか安心する絵本があります。
そんな絵が武田美穂さんの絵です。
どんな波乱万丈が絵本の中で起きても、この絵だったら大丈夫、と思えるのです。

サインペンかと思われる線が、ためらいなく輪郭を描きます。
大きなコマ割りで、テンポよく主人公の感情が動きます。
わかりやすいのです。


“ぼく”が腹這いになってお絵描きをしていると、お母さんが言います。
「またちらかして
ちゃんと かたづけなくっちゃ だめでしょ!」

「それは バウちゃんがやったんだ」

勢いで、犬のバウちゃんのせいにしてしまいます。

そのこともお母さんに注意され、おやつは無しに。
何の罪もないバウちゃんに八つ当たりです。

しばらくはふてくされて寝転がっていた“ぼく”ですが、むくっと起き上ると散らかったおもちゃや本、そしてお絵かきの道具をちゃんと片付けます。
いい子ですねぇ。

でも、片付けながらバウちゃんには、「べー」なんてやっています。
くすっと笑えます。

悲し気にしているバウちゃんに、指で作った影絵を見せると、バウちゃんが飛びあがって驚きます。
それを見て、いつの間にか仲直り。

“ぼく”の関心は一気に“影”へ。

バウちゃんに影のことを教えながら、外に出てみます。

塀に映っているのは、「おこりんぼの おかあさんが ベランダでおふとんを ほしている かげ」

歩いていると、地面には自分とバウちゃんの影。
“ぼく”が動くと、影も動きます。

小石にも、草にも、花にも、木にも影があります。

知らないおじさんが歩いていく影。
自転車と一緒に走る影。
鳥が飛んでいく影。

仲良しの女の子と道でばったり。
“ぼく”の名前は「けんたくん」でした。

女の子がお母さんと一緒だったのを見て、“ぼく”もお母さんのところに帰りたくなります。
そして、ごめんねって言おうと思うのです。
あ~、やっぱりいい子ですねぇ。

帰り道、大きな建物(たぶんマンション)の影を見つけて、その建物に登ってみます。
屋上で見たのは、本日最大の影。
雲の影でした。

雲の影は動いて、町を覆っていきました。


実は、雲の影をつい最近、私も見たばかりです。

先週、娘と筑波山へ行き、女体山の山頂の岩に腰を下ろした時です。
下界を見下ろすと、ある一帯がとても暗いのです。
おやっ?と思って見ると、それは雲の影なのでした。
視界に入っている風景の半分ほどの広さです。
輝いて見える空の雲が、地上にこんなにも大きな影を落としているとは!
人間の手ではどうにもできない、厳然たる“自然”の力を、雲に見せられたような気がしました。

画像



雲の影を見送った“ぼく”のお腹がぐ~と鳴りました。
そんな“ぼく”を包んだのは、お迎えに来たお母さんの日傘の影でした。


影と言ったら「黒」のイメージですが、この絵本の影はどれも黒では描かれていません。
影が落ちている場所の色が濃くなっているだけです。

影はやさしいと思わせてくれる絵本です。

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック