第339夜 【てんをおしあげたはなし】

【てんを おしあげた はなし】
福音館書店 こどものとも 通巻620号 2007年11月1日発行
中国チワン族のおはなし
牧野夏子 文
佐々木マキ 絵
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良きにつけ悪しきにつけ“中国”が話題に上ることが多くなりました。
地図や地球儀で見ると、その広さに改めてめまいがするほどです。
「中国が~」と一言で言っていい広さか?と思います。

その中国の少数民族の中で最も人口が多く、南部の原住民族として長い歴史を持っているチワン族の昔話です。
文を書いた牧野夏子さんが折り込み付録に書いています。

「チワン族が暮らすのは、中国の南の方、岩山がにょきにょきそびえ立ち、まるで山水画そのままの景色が広がる土地です。
あんな風景をいつも眺めていたら、自然と不思議な話を思いつきそうです。」

不思議な話とはこうです。
昔々、太陽も月も星も草や木も人間も動物も、つまりなにもかもこの世に無かったころ、天と地はぴったりとくっついていました。
天と地は仲のよいきょうだいで、どんな時も離れたことがありませんでした。
ところがいつの間にか、天と地の間に、太陽や月や星、草や木や動物、それに人間たちが現れました。
そのせいで、天と地は前のように一緒にいることができなくなってしまいました。

再びくっつきたいと思った天と地は、上からと下から、それぞれ力いっぱい押し合いを始めます。
天と地の間は狭くなっていき、間にいたものたちは苦しくてたまりません。

太陽は真っ赤な顔になり、月は青ざめます。
星はポロポロ落っこちてきて、草や木は曲がってしまいます。
動物は立っていられなくなり(なんとそれまで、すべての動物は二足歩行でした!)、四つんばいになります。
人間だけが歯を食いしばって二本足で立っていました。
(年よりは背中や腰が曲がってしまいましたが・・・)

天と地は益々力をこめて押してきます。
いよいよ人間も我慢できそうにありません。
その時、一人のおじいさんが言います。
「天と地の間に、つっかい棒を立てるのじゃ!」

おじいさんの言うとおり、人間たちは森の奥から四本の巨木を切ってきて、北と南、東と西に別れて一斉に木を立て、天を上に押し上げ、地を下に押し下げます。
それまで何度もつっかい棒を倒し、失敗した人間たちでしたが、今度はうまくいきました。
つっかい棒はびくともしません。

おかげで今でも天と地の間で、太陽や月、星や草や木や動物、そして人間が暮らしていられるのです。

この世で生きていられること、そのこと自体をありがたいと思う・・・
自然と共に暮らせていることを幸せだと思う・・・
昔の人たちは、そういう思いをお話に託していたのかもしれません。


【おうじと たこと きょじんのくに】
福音館書店 こどものとも 通巻654号 2010年9月1日発行
牧野夏子 文
殿内真帆 絵
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中国に伝わる昔話をもとにしたお話とのこと。
確かに王子のお供が300人とか、巨人の鼻の穴の奥を、まる一日歩き続けたとかいうあたりが、中国っぽい。

王子は300人のお供を連れて山へ遊びに行き、思い立って、大きな凧をあげたのですが、糸が切れて、凧がどこかへ飛んで行ってしまいます。
一行が凧を探して歩いていくと、次々に巨人に出会います。
それが、会うたびに、巨人のスケールが大きくなっていくのです。

最後に会った巨人は、横たわっているらしく、耳しか見えていません。
枯葉に乗せた王子と300人のお供を、たった三歩でもとの場所に連れ帰ってしまうほどの大きさです。

「途方もないホラ話に付き合って想像する快感と、ばかばかしい愉しさが出てればいいな」と、作者の牧野夏子さんが折り込み付録で述べていますが、充分に達成されていると思います。

殿内真帆さんの、ちっとも中国らしくない絵が、これまたなんともいえません。
この絵だからこそのクールな滑稽さがいいと思います。
(Aug. 2010 書き加え)


【キリンとアイスクリーム】
福音館書店 こどものとも年少版 通巻391号 2009年10月1日発行
牧野夏子 文
D[di:] 絵
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なんとも不思議な絵本です。

表紙のキリンを見るだけで、その不思議さが少しは伝わるかもしれませんが、ページをめくり、不思議さの100%を体感してほしいと思います。

平面でありながら高低をこんなにも感じることができるのか?! と驚くしかない構図!

公園でアイスクリームを食べていた男の子が、よだれをたらしているキリンに、なんとかアイスクリームを食べさせようと奮闘します。
最初に、男の子が地面の上からキリンを見上げている絵!
こういう高低の遠近感、なかなか体験できません。

男の子は、背の高いキリンに何とか近づこうと、ブランコをこいだり、滑り台に乗ったり、ジャングルジムに上ったりしますが、キリンのよだれはもっと高いところから落ちてきます、キラキラ輝きながら。

アイスクリームはどんどん溶けていきます。

男の子は鼻水なんかたらしてはいますが、賢いのです。
公園を出ると、川にかかる橋の上に行きます。
土手を降りたキリンに、やっとのことでアイスクリームを差し出すことができました。

キリンはアイスクリームを一口で平らげます。
「いただきます」とも、「ごちそうさま」とも言わずに。
でも、長いのどが、ごくりと鳴りました。

キリンの満ち足りた表情、そしてある種のプライドの高さが、まつげの辺りに漂っています。
キリンの動作はゆっくりです。
「ぽくりぽくり」なのです。

海に沈む赤い夕日を見て、イチゴ味のアイスクリームを思い出したのか、最後のページでキリンは、またしてもキラキラと輝くよだれを長~くたらすのでありました。
(Aug. 2010 書き加え)

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