第1379夜 【ちいさな おおきなき】

【ちいさな おおきなき】
小学館 2015年7月27日発行
作=夢枕 獏
絵=山村浩二
画像

小さな小さな小さな芽を見つけたのは、アリでした。
そのアリよりも小さな芽でした。

それが、
さあ どうだ

どうだ どうだ
どうだ どうだ
さあ!! どうだ
どうだああああああ


と、伸びていき、千年、万年と枝葉を広げ、大地に根を張り、
大きな大きな大きな大きな木になりました。

山よりも、雲よりも高く、てっぺんは雪で白くなっています。

雪が解けて川となり、滝が流れて湖ができます。

動物がやってきて住み始めます。
魚も鳥もやってきます。
そうして人も住み始めます。

道ができて、町ができます。
汽車も船も走っています。


どうだどうだと伸びていった時の木の面影はもはやありません。

家々はいびつで、動物や人の存在よりも、無機質な物が多くなります。

人々は家を建てるために枝を切り、工場の煙突からは真っ黒な煙が。
枝の争奪戦も起こります。

もはやこの絵が木の絵だとは思えません。
無残な木の姿には、目を覆いたくなります。

ありは ないたな
ぞうも ないたな
とらも ないたな
りゅうも ないたな

ひとだって ないたよ


人も泣いちゃってるけど、木をこんな風にしたのは、間違いなく人なんですよね。

木は崩壊寸前です。
アリが逃げ出し、動物たちも、そして人も木から去ります。

みりみり
みりみり
ずん
ずっしん

どんどろ
どどどどどどう


遂に大きな木は倒れます。
倒れる姿がまるでヒトのようにも見えます。


倒れた木の跡に、苔が生え、再び小さな芽が生えています。
芽の傍らに来たアリがつぶやきます。
「おまえは どんな おおきな きに なるやらなあ」

「それはヒト次第でしょ」
答を、アリは知っているはずです。

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