第1343夜 【たまごを うって こぶたを かって】

【たまごを うって こぶたを かって】
福音館書店 こどものとも 通巻708号 2015年3月1日発行
ブルガリアの昔話
八百板洋子 再話
日置由美子 絵
画像

若いお百姓が、庭先で飼っているめんどりが産んだ卵を市場で売って暮らしていました。
ある日、卵が100個たまったので、若者はそれをかごに入れ、一本の棒にひっかけ肩に担いで市場へ向かいました。(表紙の絵がその様子です。)

道すがら、若者は胸算用を始めます。
  卵が売れたら、子ブタを買おう。
  子ブタはすぐに大きくなるだろう。
  大きくなったブタはたくさんの子ブタを生むだろう。
  その子ブタはさらに子ブタを生んで、どんどん増えていくだろう。
  
若者は嬉しくなってきました。
そうして、空想はさらに広がります。
  ブタを売ってお金を儲けたら、馬を買おう。
  そして上等の服も買おう。
  その服を着て馬に乗ったら、村の娘たちは夢中になるだろう。

若者は自分の考えにうっとりします。
  村一番の美人のガーナと結婚して、子どもが生まれる。
  かわいい男の子だ。
  ボグダンという名にしよう。
  ボグダンに、市場でおいしいリンゴを買って行ってやろう。
  家に帰ると、ボグダンが迎えに駆け出してくる。

  「とうさん、おかえり!」
  
若者は息子を抱き上げようと、大きく両手を広げます。
すると、
ガシャガシャガシャーン

肩に担いだ棒から手を離したのでたまりません。
かごは滑り落ち、卵が放り出され、ひとつ残らず割れてしまいました。


「取らぬ狸の皮算用」ということばを使うのには抵抗があります。
若者の空想が、ちっとも欲深に思えないのです。
それはひとえに、この絵のおかげではないかと思います。

空想の場面は、程よくかすんでいるのですが、それがとても美しいのです。
自分も若者と一緒に、この夢を見ているような気になります。

割れた卵が道の上に飛び散っているところに、二匹の猫が寄ってきます。
それが妙に現実に戻った感じを強めます。

あぁ、残念だなあ…
と思いながら、最後のページを見てホッとしました。

「若いお百姓が家に帰ると、めんどりはまた一つ卵を産んでいました。」


お話が“希望”で終わるのは嬉しいことです。

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