第471夜 【きりんいす】
【つちのひと】
福音館書店 こどものとも 通巻546号 2001年9月1日発行
岡井美穂 作・造形
マサト コンピュータ グラフィックス
「あるひ はたけに たくさん あめが ふりました。
つぎの はたけから ひとが はえてきました」
確かに畑から人間の上半身(肩の辺りまで)が出てきています。
顔は天を仰いでいます。
うっすら口を開けて。
「え~っ?!」
と、一緒に見ていた息子と私の口から同時に声が漏れました。
その後、その“ひと”が耕す畑から、次々と、ウサギやらヒツジやらニワトリやらが生えてくるのには、二人とももう笑うしかありませんでした。
「これって、なにか深い意味を探ろうなんてしないほうがいいね。
ただ笑ってればいいんじゃん。」
高校三年の息子のコメントです。
同感です。
畑から生えた動物たちと“ひと”はどんどん畑を耕すのですが、肝心の植物(作物)は微塵も見当たりません。
とうとう、ある日降った大雨で、みんな融けていなくなってしまいます。
悲しいんだか、おかしいんだか・・・。
そうして次の日また畑から“ひと”が生えてきて(今度は三人)、やっぱり畑を耕すのでした。
畑の部分はコンピュータグラフィックですが、“ひと”や動物たちは明らかに手でこねて作った土による造形物です。
我家のベランダには、なぜか埴輪が2個あるのですが、そのお友達のように見えます。
【きりんいす】
福音館書店 こどものとも年中向き 通巻211号 2003年10月1日発行
岡井美穂 さく
ある日“ぼく”は、近くの広場に捨ててあった小さな木のイスを拾ってきます。
日に日にイスは成長していき、“ぼく”に相槌をうったりします。
もはや、イスはただのイスではなく、完全に“生き物”です。
ある日、“ぼく”はイスに茶色の絵の具で模様を描きます。
「うれしいな。きりんみたいだ」
イスが言います。
それから“ぼく”は“きりんいす”に乗り、冒険の旅へと出かけます。
雲を蹴り、丘を越え、山を越えてジャングルへ。
動物たちとかけっこです。
一着でゴール。
気持ちよさそう!
鳥たちと一緒に大空も舞います。
高いところから世界を見下ろすのは、永遠の憧れです。
夜、“ぼく”と“きりんいす”は家に戻ります。
“きりんいす”は庭で木のふりをしています。
窓から見える三日月と“きりんいす”のいる風景がなんともいえません。
他人には言いませんが、私には未だに空想癖があります。
何かを待っている時や、布団に入ってからなどに、どんどん空想(妄想)を膨らませるのです。
かなり現実的な希望も混ぜ込んでありますが、「こんなことができたらなあ」という映像を頭の中で繰り広げるのは快感です。
それが、この絵本の絵のような映像だったらすてきでしょうに。
【ハバラさんのほし】
福音館書店 こどものとも年中向き 通巻261号 2007年12月1日発行
岡井美穂 文・造形
表紙を見てもわかるとおり、ただの絵ではありません。
立体的な質感があります。
それもそのはず、レリーフで原画を作った後に彩色、コラージュ等の工夫をこらし、撮影して印刷したものとのことです。
岡井美穂さんの本業は陶芸家、粘土をこねるのはプロなわけです。
それが、テレビチャンピオンに出てくるような、すべすべの細工ではなくて、どこか朴訥なというか、素人っぽいというか、はたまたさすが芸術家ですなというか、とにかくスル~っといかずに記憶に引っ掛かる絵(造形)なんです。
さて、主人公のハバラさん、強烈なキャラクターです。
表紙をめくったページに、アップで彼の上半身が載っているのですが、ガツンとやられた気分です。
とにかく顔のパーツがいちいち大きい。
特に、目と口。
小さい子なら夢に出てくるかもしれません。
ゴミ集めをしているハバラさんが、ある夜、掃除機にまたがりやってきて、“ぼく”を不思議な星へと連れて行きます。
ゴミでできているというその星は、なんだか楽園のように見えます。
いろいろな果物や野菜がたわわに実っています。
生ゴミはすばらしい資源(肥料)ですからね。
公園の愉快な遊具も、空き缶や廃材でできています。
言ってみれば、reuse 、 recycle のエコ星です。
住人がみんな小さなハバラさんというのも愉快です。
平和です。
楽しそうです。
“ぼく”が目を覚ますと、やっぱりハバラさんはいつものように窓の外でゴミを集めています。
「ゴミあつめは たのしいよ。」と言いながら。
魅力的な人というのは、こんなふうに自分の人生を楽しんでいる人なのではないかと思うのでした。
【すてき すてき】
福音館書店 こどものとも年少版 通巻371号 2008年2月1日発行
岡井美穂 文・絵
男の子の落とした赤い手袋が、次々にニワトリや鳥、魚やカエルの手に渡ります。
それぞれが自分の身に付けて、いろいろな物に見立てて言います。
「すてき すてき」
思いもよらないものを手に入れて、それでいつもと違う自分にちょっと変身できた幸福感が動物たちからあふれています。
「すてき すてき」って、この絵がとにかくすてきです。
【ちいさい みどりの はこ】
福音館書店 こどものとも年中向き 通巻284号 2009年11月1日発行
岡井美穂 さく
引越しをすることになったので、“ぼく”はお父さんと荷物を詰める箱を探しに行って、小さい緑の箱を見つけます。
気に入って持ち帰ったものの、大好きなおもちゃを詰めるには緑の箱は小さすぎました。
困っていると、箱がカタカタと少し動きました。
“ぼく”が箱をひっくり返してぽんとたたくと、中から大きな箱が出てきました。
それにおもちゃをつめますが、すぐに入りきらないことがわかります。
そこでまた小さい緑の箱をたたくと、中からもっと大きな箱が出てきます。
結局、6つの大きな箱におもちゃを入れて、引越しのトラックが出発します。
赤い大きなトラックが、新しい家に着いてみると、不思議なことに、“ぼく”の箱は、小さな緑の箱が一個だけです。
あわててあちこち探しますが、大きな箱は見つかりません。
おもちゃのことを思って“ぼく”が泣いていると、小さい緑の箱がカタカタと少し動きます。
“ぼく”が小さい緑の箱をぽんとたたくと、
ぶっわーん!
中からおもちゃが飛び出してきました。
“ぼく”は、愛おしそうに小さい緑の箱をベッドの傍らに置いて眠ります。
箱はただの箱ではないのでした。
“箱”って、不思議です。
中に何が入っているのか、ナゾを秘める可能性を持っているからなのでしょうか。
何が入っていても不思議はない、というところもあります。
先日、娘と、「ちょうどいい大きさの箱」探しをしました。
「ちょうどいい」というのは意外と難しいものです。
娘が入れたがっていたのは、消しゴムはんこです。
まだ未完成の消しゴムはんこを入れるための「ちょうどいい」箱を探すのは、一層大変でした。
ところが、たまたま訪れた駅ビルの端っこにある、小じゃれた百円ショップをのぞいてみると、良さげな箱が見つかりました。
木製で、昔の大きなマッチ箱くらいの大きさです。
家に帰り、完成した消しゴムはんこを、同じく百円ショップで購入した木片に貼り付けて箱に入れてみると、まるであつらえたようにピッタリ。
思わず、「奇跡だね」と、娘と喜びました。
家にやってきた箱は、なかなか容易には捨てられません。
何かの役に立つかも・・・という思いがあるからなのですが、“不思議”の可能性を捨てるのをためらうからでもあるような気がします。
(Aug. 2010 書き加え)
【ももいろの ちいさないえ】
福音館書店 こどものとも年少版 通巻418夜 2012年1月1日発行
おかい みほ・さく
岡井美穂さんの絵本では、いつでも不思議な世界に連れて行ってもらった読後感が残ります。
今回もそうです。
異国なのか、異次元なのか…
“ぼく”と一緒に、ももいろの家の階段を上り、扉を開けては何かを発見し、窓を開けては外へと出て行く“何か”を見送りながら絵本は進みます。
扉を開けた時の部屋の色にハッと息を呑みます。
部屋の色の基調となる色と、“ぼく”が見つける“何か”の色と、窓の外の風景の色のみごとな統一性。
“ぼく”が見つけたものたちはみな、窓の外へと飛び出していきます。
窓の外の世界は、部屋の中とは対照的に、広々と壮大に描かれています。
“ぼく”もいずれは「外」へ出て行くのか…と思いきや、パタンパタンと窓や扉を閉めると、ももいろの家をたたんで、ポケットの中に入れて言います。
「また、あしたね。」
ももいろの家は入れ物ではなく、“ぼく”にとっては「友だち」なのでした。
(2012年12月 書き加え)
【おこりんぼう おじさん】
福音館書店 こどものとも年中向き 通巻319号 2012年10月1日発行
おかい みほ
悪いことをしたら謝りなさい、といった社会のルール(マナー)から、
家に帰ったら手を洗いなさい、といったしつけまで、
おこりんぼうおじさんが男の子にプンプンしながら言っていることのほとんどは、自分が子どもを育てながら言ってきたことです。
いえ、子どもが成人した今でも言っています。
これ、親である限り、子どもに言い続けるのでしょうね。
絵本のおじさんのように、怒るたびに小さくなっていったのではたまりません。
消えてしまうしかありませんもの。
絵本では、うるさく感じていたおじさんが、小さくなって見えなくなると、男の子は逆に気にしていい子になります。
言えばきかないけれど、放っておけばそれなりにやる…子どもの七不思議のひとつです。
親は、“おじさん”のように、ある時は反り返って高い位置から、またある時は小さくなってそっと、変幻自在に子どもを諭し続けなければならないのでしょう。
時にはイラつく子育ての合間に、“おじさん”のように、「わっはっは、わっはっは」と高笑いしたいものです。
(2012年12月 書き加え)
【だん!だん!だん!だん!ねんどマン】
福音館書店 ちいさなかがくのとも 通巻141号 2013年12月1日発行
おかい みほ さく
絵本からも、そして折込付録の「作者のことば」からも、とにかくビンビン伝わるのは、「粘土いじりが好きです!!」という思いです。
粘土というものから縁遠くなって、何十年になるでしょうか。
「絵本は子どものものでしょ。もう卒業しましたから(結構です)。」
と言われると、がっかりするのですが、粘土については、恥ずかしながら、
「粘土って子どもがいじるものでしょ。」
と思っていました。
粘土で作ったお団子に、鉛筆やペンなどで、表情豊かな顔を描き、それをどんどん積み上げていきます。
二段、四段、え~っ十一段も ?!
「おっとっとっと・・・」
と言っているねんどマンたちの顔がユニークで、本当に声を発しそうです。
胴体の部分のねんどマンを、くにゅくにゅとつなげると、ムーミンのにょろにょろのようになります。
てっぺんの顔は、トップをとっているだけあって、一層ユニーク!
“おこりんぼうおじさん”同様、「わっはっは、わっはっは」と笑っています。
最後は倒れて、ぐるぐるるに。
特大ポンデのようで、おいしそう。
なんだか、粘土が手に吸い付いてくる感触を、じんわり思い出しました。
(2013年11月 書き加え)
【おっしくらまんじゅう】
福音館書店 こどものとも0.1.2. 通巻238号 2015年4月1日発行
おかい みほ さく
果物同士をぶつけたり、こすったりすると、そこが傷んでしまう、というのが、主婦である私の発想でした。
ところが、この絵本では、トマトやミカンやバナナがおしくらまんじゅうでぶつかり合って、どんどんいい感じに熟していくのです。
最初は青かった(緑だった)トマトとリンゴは、何回もおしくらまんじゅうをするうちに赤くなっていき、最後は真っ赤に熟れています。
ミカンもバナナも、色は違えど同様です。
ほーら、みんな みんな ほっかほか
いい おかお
「食べごろ」の果物や野菜をいただく時には、
「いいお顔」
と思っていただくことにしましょう。
ちなみに、折り込み付録の「作者のことば」で、イタリアの冬の寒さの厳しさを初めて知りました。
冬の湿度80%というのが想像できません。
(2015年9月 書き加え)
福音館書店 こどものとも 通巻546号 2001年9月1日発行
岡井美穂 作・造形
マサト コンピュータ グラフィックス
「あるひ はたけに たくさん あめが ふりました。
つぎの はたけから ひとが はえてきました」
確かに畑から人間の上半身(肩の辺りまで)が出てきています。
顔は天を仰いでいます。
うっすら口を開けて。
「え~っ?!」
と、一緒に見ていた息子と私の口から同時に声が漏れました。
その後、その“ひと”が耕す畑から、次々と、ウサギやらヒツジやらニワトリやらが生えてくるのには、二人とももう笑うしかありませんでした。
「これって、なにか深い意味を探ろうなんてしないほうがいいね。
ただ笑ってればいいんじゃん。」
高校三年の息子のコメントです。
同感です。
畑から生えた動物たちと“ひと”はどんどん畑を耕すのですが、肝心の植物(作物)は微塵も見当たりません。
とうとう、ある日降った大雨で、みんな融けていなくなってしまいます。
悲しいんだか、おかしいんだか・・・。
そうして次の日また畑から“ひと”が生えてきて(今度は三人)、やっぱり畑を耕すのでした。
畑の部分はコンピュータグラフィックですが、“ひと”や動物たちは明らかに手でこねて作った土による造形物です。
我家のベランダには、なぜか埴輪が2個あるのですが、そのお友達のように見えます。
【きりんいす】
福音館書店 こどものとも年中向き 通巻211号 2003年10月1日発行
岡井美穂 さく
ある日“ぼく”は、近くの広場に捨ててあった小さな木のイスを拾ってきます。
日に日にイスは成長していき、“ぼく”に相槌をうったりします。
もはや、イスはただのイスではなく、完全に“生き物”です。
ある日、“ぼく”はイスに茶色の絵の具で模様を描きます。
「うれしいな。きりんみたいだ」
イスが言います。
それから“ぼく”は“きりんいす”に乗り、冒険の旅へと出かけます。
雲を蹴り、丘を越え、山を越えてジャングルへ。
動物たちとかけっこです。
一着でゴール。
気持ちよさそう!
鳥たちと一緒に大空も舞います。
高いところから世界を見下ろすのは、永遠の憧れです。
夜、“ぼく”と“きりんいす”は家に戻ります。
“きりんいす”は庭で木のふりをしています。
窓から見える三日月と“きりんいす”のいる風景がなんともいえません。
他人には言いませんが、私には未だに空想癖があります。
何かを待っている時や、布団に入ってからなどに、どんどん空想(妄想)を膨らませるのです。
かなり現実的な希望も混ぜ込んでありますが、「こんなことができたらなあ」という映像を頭の中で繰り広げるのは快感です。
それが、この絵本の絵のような映像だったらすてきでしょうに。
【ハバラさんのほし】
福音館書店 こどものとも年中向き 通巻261号 2007年12月1日発行
岡井美穂 文・造形
表紙を見てもわかるとおり、ただの絵ではありません。
立体的な質感があります。
それもそのはず、レリーフで原画を作った後に彩色、コラージュ等の工夫をこらし、撮影して印刷したものとのことです。
岡井美穂さんの本業は陶芸家、粘土をこねるのはプロなわけです。
それが、テレビチャンピオンに出てくるような、すべすべの細工ではなくて、どこか朴訥なというか、素人っぽいというか、はたまたさすが芸術家ですなというか、とにかくスル~っといかずに記憶に引っ掛かる絵(造形)なんです。
さて、主人公のハバラさん、強烈なキャラクターです。
表紙をめくったページに、アップで彼の上半身が載っているのですが、ガツンとやられた気分です。
とにかく顔のパーツがいちいち大きい。
特に、目と口。
小さい子なら夢に出てくるかもしれません。
ゴミ集めをしているハバラさんが、ある夜、掃除機にまたがりやってきて、“ぼく”を不思議な星へと連れて行きます。
ゴミでできているというその星は、なんだか楽園のように見えます。
いろいろな果物や野菜がたわわに実っています。
生ゴミはすばらしい資源(肥料)ですからね。
公園の愉快な遊具も、空き缶や廃材でできています。
言ってみれば、reuse 、 recycle のエコ星です。
住人がみんな小さなハバラさんというのも愉快です。
平和です。
楽しそうです。
“ぼく”が目を覚ますと、やっぱりハバラさんはいつものように窓の外でゴミを集めています。
「ゴミあつめは たのしいよ。」と言いながら。
魅力的な人というのは、こんなふうに自分の人生を楽しんでいる人なのではないかと思うのでした。
【すてき すてき】
福音館書店 こどものとも年少版 通巻371号 2008年2月1日発行
岡井美穂 文・絵
男の子の落とした赤い手袋が、次々にニワトリや鳥、魚やカエルの手に渡ります。
それぞれが自分の身に付けて、いろいろな物に見立てて言います。
「すてき すてき」
思いもよらないものを手に入れて、それでいつもと違う自分にちょっと変身できた幸福感が動物たちからあふれています。
「すてき すてき」って、この絵がとにかくすてきです。
【ちいさい みどりの はこ】
福音館書店 こどものとも年中向き 通巻284号 2009年11月1日発行
岡井美穂 さく
引越しをすることになったので、“ぼく”はお父さんと荷物を詰める箱を探しに行って、小さい緑の箱を見つけます。
気に入って持ち帰ったものの、大好きなおもちゃを詰めるには緑の箱は小さすぎました。
困っていると、箱がカタカタと少し動きました。
“ぼく”が箱をひっくり返してぽんとたたくと、中から大きな箱が出てきました。
それにおもちゃをつめますが、すぐに入りきらないことがわかります。
そこでまた小さい緑の箱をたたくと、中からもっと大きな箱が出てきます。
結局、6つの大きな箱におもちゃを入れて、引越しのトラックが出発します。
赤い大きなトラックが、新しい家に着いてみると、不思議なことに、“ぼく”の箱は、小さな緑の箱が一個だけです。
あわててあちこち探しますが、大きな箱は見つかりません。
おもちゃのことを思って“ぼく”が泣いていると、小さい緑の箱がカタカタと少し動きます。
“ぼく”が小さい緑の箱をぽんとたたくと、
ぶっわーん!
中からおもちゃが飛び出してきました。
“ぼく”は、愛おしそうに小さい緑の箱をベッドの傍らに置いて眠ります。
箱はただの箱ではないのでした。
“箱”って、不思議です。
中に何が入っているのか、ナゾを秘める可能性を持っているからなのでしょうか。
何が入っていても不思議はない、というところもあります。
先日、娘と、「ちょうどいい大きさの箱」探しをしました。
「ちょうどいい」というのは意外と難しいものです。
娘が入れたがっていたのは、消しゴムはんこです。
まだ未完成の消しゴムはんこを入れるための「ちょうどいい」箱を探すのは、一層大変でした。
ところが、たまたま訪れた駅ビルの端っこにある、小じゃれた百円ショップをのぞいてみると、良さげな箱が見つかりました。
木製で、昔の大きなマッチ箱くらいの大きさです。
家に帰り、完成した消しゴムはんこを、同じく百円ショップで購入した木片に貼り付けて箱に入れてみると、まるであつらえたようにピッタリ。
思わず、「奇跡だね」と、娘と喜びました。
家にやってきた箱は、なかなか容易には捨てられません。
何かの役に立つかも・・・という思いがあるからなのですが、“不思議”の可能性を捨てるのをためらうからでもあるような気がします。
(Aug. 2010 書き加え)
【ももいろの ちいさないえ】
福音館書店 こどものとも年少版 通巻418夜 2012年1月1日発行
おかい みほ・さく
岡井美穂さんの絵本では、いつでも不思議な世界に連れて行ってもらった読後感が残ります。
今回もそうです。
異国なのか、異次元なのか…
“ぼく”と一緒に、ももいろの家の階段を上り、扉を開けては何かを発見し、窓を開けては外へと出て行く“何か”を見送りながら絵本は進みます。
扉を開けた時の部屋の色にハッと息を呑みます。
部屋の色の基調となる色と、“ぼく”が見つける“何か”の色と、窓の外の風景の色のみごとな統一性。
“ぼく”が見つけたものたちはみな、窓の外へと飛び出していきます。
窓の外の世界は、部屋の中とは対照的に、広々と壮大に描かれています。
“ぼく”もいずれは「外」へ出て行くのか…と思いきや、パタンパタンと窓や扉を閉めると、ももいろの家をたたんで、ポケットの中に入れて言います。
「また、あしたね。」
ももいろの家は入れ物ではなく、“ぼく”にとっては「友だち」なのでした。
(2012年12月 書き加え)
【おこりんぼう おじさん】
福音館書店 こどものとも年中向き 通巻319号 2012年10月1日発行
おかい みほ
悪いことをしたら謝りなさい、といった社会のルール(マナー)から、
家に帰ったら手を洗いなさい、といったしつけまで、
おこりんぼうおじさんが男の子にプンプンしながら言っていることのほとんどは、自分が子どもを育てながら言ってきたことです。
いえ、子どもが成人した今でも言っています。
これ、親である限り、子どもに言い続けるのでしょうね。
絵本のおじさんのように、怒るたびに小さくなっていったのではたまりません。
消えてしまうしかありませんもの。
絵本では、うるさく感じていたおじさんが、小さくなって見えなくなると、男の子は逆に気にしていい子になります。
言えばきかないけれど、放っておけばそれなりにやる…子どもの七不思議のひとつです。
親は、“おじさん”のように、ある時は反り返って高い位置から、またある時は小さくなってそっと、変幻自在に子どもを諭し続けなければならないのでしょう。
時にはイラつく子育ての合間に、“おじさん”のように、「わっはっは、わっはっは」と高笑いしたいものです。
(2012年12月 書き加え)
【だん!だん!だん!だん!ねんどマン】
福音館書店 ちいさなかがくのとも 通巻141号 2013年12月1日発行
おかい みほ さく
絵本からも、そして折込付録の「作者のことば」からも、とにかくビンビン伝わるのは、「粘土いじりが好きです!!」という思いです。
粘土というものから縁遠くなって、何十年になるでしょうか。
「絵本は子どものものでしょ。もう卒業しましたから(結構です)。」
と言われると、がっかりするのですが、粘土については、恥ずかしながら、
「粘土って子どもがいじるものでしょ。」
と思っていました。
粘土で作ったお団子に、鉛筆やペンなどで、表情豊かな顔を描き、それをどんどん積み上げていきます。
二段、四段、え~っ十一段も ?!
「おっとっとっと・・・」
と言っているねんどマンたちの顔がユニークで、本当に声を発しそうです。
胴体の部分のねんどマンを、くにゅくにゅとつなげると、ムーミンのにょろにょろのようになります。
てっぺんの顔は、トップをとっているだけあって、一層ユニーク!
“おこりんぼうおじさん”同様、「わっはっは、わっはっは」と笑っています。
最後は倒れて、ぐるぐるるに。
特大ポンデのようで、おいしそう。
なんだか、粘土が手に吸い付いてくる感触を、じんわり思い出しました。
(2013年11月 書き加え)
【おっしくらまんじゅう】
福音館書店 こどものとも0.1.2. 通巻238号 2015年4月1日発行
おかい みほ さく
果物同士をぶつけたり、こすったりすると、そこが傷んでしまう、というのが、主婦である私の発想でした。
ところが、この絵本では、トマトやミカンやバナナがおしくらまんじゅうでぶつかり合って、どんどんいい感じに熟していくのです。
最初は青かった(緑だった)トマトとリンゴは、何回もおしくらまんじゅうをするうちに赤くなっていき、最後は真っ赤に熟れています。
ミカンもバナナも、色は違えど同様です。
ほーら、みんな みんな ほっかほか
いい おかお
「食べごろ」の果物や野菜をいただく時には、
「いいお顔」
と思っていただくことにしましょう。
ちなみに、折り込み付録の「作者のことば」で、イタリアの冬の寒さの厳しさを初めて知りました。
冬の湿度80%というのが想像できません。
(2015年9月 書き加え)









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