第1665夜 【スマイルショップ】

【スマイルショップ】
岩波書店 2020年10月6日発行
きたむらさとし
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やっぱり、きたむらさとしさんの絵本が大好きです。
押しつけがましくなく、
つまりサラッと、
心に花束を渡されたような気持ちになるからです。

ああ、わくわくする。

ためていた おこづかいで
きょう かいものを するんだ。

ぼくの はじめての かいもの!
なにを かおうかなあ。


手のひらにコインを握りしめ、男の子が街をいきます。

人でいっぱいの広場、お店屋さんもいっぱいです。

野菜や果物のきれいな色に瞳を輝かせ、
カレーのにおいを、目をつぶって深く吸い込み、
パン屋さんのウインドウの中のアップルパイを見つめ、
時計屋さんの前で佇みます。

おもちゃ屋さんで、かっこいいボートを手にしますが、
手持ちのお小遣いでは買えそうにありません。

本屋さんで、おもしろそうな本を見つけ、
楽器屋さんで、不思議なホーンの音を出し、
蚤の市で帽子を試着してみます。

なんて楽しいのでしょう。
彼と一緒にウインドウショッピングするのは。

何にしようか、そろそろ決めなくちゃ、と思っていたところで、
スケートボードに乗ってきた人がぶつかってきて、
あっ!
大事なお小遣いが穴に落ちてしまいます。

どうしよう…

残ったコインはたった一枚。

これじゃあ もう
なんにも かえないや…


背景も、道行く人たちも〝色”を失いました。

(取り乱さない〝ぼく”に敬服です。)

そんな彼が見つけたのは、
「スマイルショップ」と書かれた看板。

スマイルの おみせ?

笑う気分ではないけれど…
〝ぼく”は店の扉を開けます。

ちゃんとした身なりのお店のおじさんに、〝ぼく”はたずねます。

「あのぉ、スマイル…かえますか?

 おかね、すこししか もってないから
 ちっちゃなやつで いいんですけど…」


するとおじさんは答えます。
「スマイルは うっておりません」

「でも、ここ、
 スマイルショップでしょ?
 スマイルの おみせ なんでしょ?」


「はい、たしかに おみせの なまえは スマイルショップですが、
 スマイルは おかねで かえるものでは ございません。
 スマイルというものは…」


読んでいる私も、その答えを待って、ごくりと唾をのみました。

「スマイルというものは こうかんするもの。
 そして、だれかと わけあうものです!」


そう言っておじさんはにっこりと笑いました。
〝ぼく”も笑いました。

するとおじさんは〝ぼく”の笑顔をカメラで撮って、その写真をくれました。

〝ぼく”とおじさんはさよならを言って、スマイルを交換しました。

街は再び色を取り戻しています。

 かえりみち、 ぼくは きがついた。
 みんな わらっていた。
 とおりでは だれも かれもが わらっていた。

 そして、せかいじゅうが…

 ぼくと いっしょに
 わらっていた。



おじさんの店は、「スマイルショップ」という名の写真屋さんだったのかもしれません。
でも、〝ぼく”にとっては、
正真正銘の「スマイルショップ」でした。

最後のページの、写真に写った〝ぼく”の笑顔ときたら、最高です。
その笑顔と、私もスマイルを交換しました。












きたむらさとしさんの絵本は、第369夜~第378夜、第992夜、第1050夜、第1099夜、
第1393夜、第1492夜、第1532夜、第1558夜でも紹介しています。
















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