第1642夜 【パンやの くまさん】

【パンやの くまさん】
福音館書店 1987年5月30日発行
フィービとセルビ・ウォージントン さく・え
まさき るりこ やく
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私の両親は農家です。
朝早くから夜遅くまで、勤務時間という概念もなく働いていました。
労働としても、重いものを持ち運んだり、泥にまみれたりで、
決して楽とは言えない仕事です。
ですから私も『なりたい』と思ったことはありませんでした。

勤め人として働くようになってしばらくして、ふと思いました。
農家である両親に、どこか同情するような気持ちでいた私でしたが、
もしかしたら両親の方が自分より〝自由”なんじゃないかと。

勤務時間も自分たちで決めます。
もちろん、休憩時間も。
段取りも自分たちで。

誰かに(上司に)命じられてとか、組織のためにとかではなく、
純粋によい作物を作るためにという動機で働いていたわけです。

ある時、そのことを母に話すと、
「そう言われればそうかもしれないね」
「勤め人として働いたことはないけれども」と言いました。

パン屋のくまさんを見て、両親を思い出しました。
すべて自分の意志で、そして、自分一人でパン屋さんを営んでいるのです。

くまさんは朝早く起きて大きなかまどに火を入れます。
かまどが充分熱くなるのを待ちながら、朝一番のお茶を飲みます。

それからパンの生地をこね、パイやケーキを作ります。
パンの生地が膨らむまでの間、本式に朝ごはんを食べます。

全部がホカホカに焼きあがると、半分を店に並べ、
半分を車に積んで通りへ出かけ、そこで売ります。

おうちにケーキを届けたりもします。

店に戻って、今度は店でパンを売ります。
礼儀正しいくまさんが、街の人たちは大好きです。

時々子どもにキャンディをあげたりします。

パンが全部売れると店を閉め、暖炉のそばで晩御飯を食べます。
晩御飯が済むと、お金を数えます。
そしてそれを貯金箱にしまいます。

忙しい一日が終わり、すっかりくたびれたくまさんは、
目覚まし時計をかけると、小さいベッドに入ります。
それからぐっすり眠るのです。

これが、パン屋のくまさんのお話です。

くまさんはずっと一人です。
でも、ちっとも〝孤独”を感じさせません。
自分で決めて、自分で働く(動く)。
喜びも自分の内側にあります。
これほど満ち足りることがあるでしょうか。
孤独感の入り込む隙はありません。

母は今でも、畑にいる時に極上の幸せを感じるようです。

フィービとセルビ・ウォージントンさんの絵本は、第871夜でも紹介しています。(【ゆうびんやのくまさん】)



















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