第1524夜 【飛びたかった人たち】

【飛びたかった人たち】
福音館書店 たくさんのふしぎ傑作集 1994年5月25日発行
佐々木マキ 作
画像

〝飛びたかった人”で私が最初に思い出すのは、レオナルド・ダ・ヴィンチです。
中学生の頃、NHKで観たドラマ「レオナルド・ダ・ヴィンチの生涯」の印象が強烈だからです。

酉年生まれだからというわけでもないでしょうが、子どもの頃から高いところが好きだった私は、〝飛ぶ”ということにもほのかな憧れを抱いていました。

しかし、素の人間が飛べるはずなどなく、そんなことを考えるのは常識的ではないと、子どもながらに決めつけていたと思われます。

それが、至極真面目に、真剣に、しかも科学的に、レオナルドさんは飛ぼうとしていました。
大きな翼を肩につけ、助走して丘の上から飛ぼうとした実験のシーンを覚えています。

ですから、私にとってのレオナルド・ダ・ヴィンチは、モナリザを描いた画家というよりも、〝飛びたかった人”という認識なのです。

この絵本でも、
「レオナルドは〈飛行〉ということを科学的に研究した最初の人である。」
と述べています。

さて、絵本の最初に、レオナルド以前の〝飛びたかった人たち”がズラリと紹介されています。
こんな調子です。

・紀元67年、シモン・マグスというシリアの魔術師は、船の帆に似た翼を作って、ローマ皇帝ネロの前で飛んでみせようとしたが、落ちて首の骨を折った。

・890年(880年ともいう)アバス・ベン・フィルナスというアラビア人がコルドバで、鳥の羽根で作った翼で飛ぼうとしたが、落ちて死んだ。

・1029年(1130年ともいう)ベネディクト派の修道士エルマー(またはオリヴァー)は、羽根を植えた人工の翼を手と足で動かして、マームズベリー修道院の塔から跳び、少し滑空したが、墜落して両脚を折った。


以下略

命がけで飛ぼうとした人々の努力を思うと、にやけている場合じゃないと思うのですが、なぜか不謹慎にも顔が緩んでしまうのでした。


人類初の飛行といえば、ライト兄弟というのがクイズの答えですが、それまでの〝飛びたかった人たち”についてはあまり知られていません。
興味深いことだらけです。

人類初の有人飛行は、熱気球によるものでした。

それまでの気球による失敗例も紹介されていますが、語り方が平凡な説明ではありません。

シャルリエール号と名づけられた気球が40分あまり空を飛び、パリから20kmほど離れたゴヌッスの村に落ちた。びっくりした村人たちは、気球を〈悪魔の使い〉だと思って、熊手やから傘で攻撃し、壊してしまった。

〈モンゴルフィエ式〉熱気球は8分間飛んだあと3km離れた森に落ちたが、動物たちは無事だった。


こういうエピソードをちりばめてくれるのが心憎い!


〝飛びたかった人たち”は途絶えることなく、飛行の技術は進歩していきます。

イギリスの〈航空の父〉ケイリー。
しかし当時の人の目から見れば、ただの〈変人〉だった。
ケイリーは自分の研究がまじめなものであることを説得して回らなければならなかった。

以降も次々と…

機械のエネルギーを飛行機の推力に利用しようと考えた最初の人、ウィリアム・ヘンソン(イギリス)

さまざまな先見的アイディアが見られる水陸両用の飛行機を設計し、特許をとりながら、実物を製作する前に30歳で自殺してしまったフランスの天才アルフォンス・ペノー

翼の形を研究し、優れたプロペラを完成させたアメリカ生まれのイギリス人、ハイラム・マキシム

星型エンジンを搭載した飛行機を完成させながら、実験がうまくいかなかったラングリーとマンリー


〝飛びたかった人たち”の多くは、「うまくいかなかった」人たちなのでした。


はばたき飛行から固定翼のグライダーの実験に転じたオットー・リリエンタールは、自ら可動式水平尾翼の性能をテストするために崖から飛び立ったが、強い突風を受けて墜落、背骨を折って翌日死亡。
彼の墓には、彼がしばしば口にした言葉が刻まれている
「犠牲は避けられない」


現在、私たちは飛行機のおかげで、はるか遠くの地まで行くことができたり、短い時間で移動できたりします。
それもこれも、数知れない〝犠牲”あってのことだということを、改めて思い出させてくれます。


随所に挟み込まれた佐々木マキさんのまんがも、ちょっとシニカルで、子どもだけが読むのはもったいない。

読み終えて、佐々木マキさんにしか作れない絵本だなぁと、感激を新たにしました。



佐々木マキさんの【ぼくが とぶ】は、第317夜で紹介しています。

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