第1298夜 【へろへろおじさん】

【へろへろおじさん】
福音館書店 こどものとも 通巻695号 2014年2月1日発行
佐々木マキ
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人は、相対的なことで感動することが多いのではないかと常々思っていましたが、この絵本を読むと、やっぱりねと思います。
つらいことが多いほど、つまり“へろへろ度”が高いほど、いいことがあった時の感動が大きいのです。

つい最近で言えば、ソチオリンピックでの浅田真央選手。
ショートプログラムで味わったつらさが、フリーの演技の満足度、達成感、そして喜びを倍増させたのではないでしょうか。
見ていた私たちにしてもそうでした。
ショートプログラム後の痛々しいほど沈んだ彼女の表情を見たからこそ、フリーの後の輝く笑顔に一層胸打たれ、涙したのでした。

浅田選手の場合は、(失礼ですが)へろへろの後、偶然にいいことがあったのではなく、自らの精神力と実力でいいことを作り出したわけですから、本当に素晴らしいとしか言いようがありません。
心から尊敬します。

スケールも次元も全く違いますが、我が家の洗濯機が壊れてから、しばらく手洗いをする日々でした。
息子は黒いTシャツを、一日に4,5枚洗濯機に放り込みます。
どんだけお色直し、いや、黒から黒ですから色は変わらないのですが、とにかく着替えているのか!
と、このたびは腹立たしくなりました。

洗うことよりも大変だったのは、すすぎです。
やってもやっても減らない気がして、何度もため息をつきました。
爪はボロボロ、腰も痛む…

そんな中、こういうことを普通にやっていた昔の人たち(母も含む)を、改めて偉いと思いました。
“当たり前”と思って鈍っていた感覚を目覚めさせてもらったことが、一つ目のいいこと。

二つ目のいいことは、自分で手洗いした洗濯物を干していると、一枚一枚の洗濯物に対する何とも言えない愛しさを感じることができたこと。
こんな思いは、子どもたちのおむつを洗っていた時以来でした。

そして、三つめは、今日やっと届いた新しい洗濯機に、使用する前から感謝の気持ちがわいていることです。


絵本のおじさんは、手紙を投函しに出かけようとして、階段をだだだんっと滑り落ちたのを皮切りに、次々と災難に見舞われます。
そのたびに、おじさんの姿はよれよれになりますが、おじさんの偉いところは、いちいち不平を言ったり、怒ったりしないところです。

そんなおじさんが、やっと手紙を投函し終え、公園に行ってアイスクリームを食べようとします。
その時、 ――きっと同じような体験をした人は五万といることでしょうが――、アイスクリームのヘッドがぽたりと地面に落ちました。

「いろいろ ひどいめに あったけれど、おじさんは ずっと がまんしてきました。
でも、こんどだけは――
こらえきれずに おじさんは、ベンチに すわって なきました。」

実はおじさん、アイスクリーム事件の前に、客観的に見て、もっともっと理不尽な目に何度もあっているのです。
その時には耐えられたのに、アイスクリームでは我慢できなかったんですね…。

そういうものですよね。
ハードさ加減の問題ではなく、タイミングや、“ツボ”の問題なんですよね。

へろへろおじさんを救ってくれたのは、小さな女の子。
「これ、どうぞ」
とアイスクリームを差し出されると、おじさんはにっこり笑って立ち上がり、深々と頭を下げます。

その後姿の絵が、なんだか好きです。
うれしさと感謝と、そしてもっともっとたくさんの思いが伝わってきます。

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