第1283夜 【カタッポ】

【カタッポ】
福音館書店 こどものとも 通巻694号 2014年1月1日発行
大原悦子 文
山村浩二 絵
画像

おもちゃ屋さんのおもちゃたちが、人気のなくなった夜に動いたりしゃべったりするというお話はよくあります。
おもちゃはいかにもそういうことをしそうです。

しかし、落し物の箱の中の物たちが動いたりしゃべったりするということは、なんだかそれ以上にあり得ることなのではないかと思えるのです。
選ばれて誰かの持ち物となったのに、不本意にも“落し物”となり、持ち主や片割れと離れ離れになってしまった・・・
これはもう、ただの物としてじっとしているわけはないでしょう。


駅の「おとしものばこ」に新入りがやってきました。
茶色の手袋の片方、つまり「カタッポ」です。
「おとしものばこ」の先輩たちは、背中に「K」の編み込みのある彼を「Kくん」と呼んで歓迎します。

「おとしものばこの」先輩カタッポには、
五本指の先っちょがあいたレッド、
いちごミルク色の赤ちゃん用の手袋のピンキー、
細長い指が自慢の緑色のミドリーナ、
毛玉だらけの大きなデカさん、
の四人がいました。(表紙の絵参照)

ある夜、駅長さんが電話で、落し物の中身を整理すると話しているのを耳にします。
財布や時計と違って、燃えるゴミとして処分されてしまうカタッポたちは、「おとしものばこ」を脱出し、自分たちで持ち主を見つけに行くことにします。

持ち主がいつもコロッケパンを買っていたパン屋さんの前に身を置いたKくんは、幸いパン屋のおばさんに拾われます。
そして、レジの前にぶら下げてもらい、無事に持ち主の高校生の手に帰ることができました。
ほほえましいことに、ガールフレンドの手編みだったのです。

犬にくわえられて連れ去られたミドリーナも、持ち主の女の人のもとに帰ることができました。

     奇跡がずっと続くといいな、と思っていると、雪が降ってきます。

道端にひっそり立っているお地蔵様の手がかじかんでいるのを見たピンキーは、自分の居場所はここだと決めます。

いよいよ残りはレッドとデカさんの二人になりました。

ピンキーのように、自分も誰かの役に立ちたいと思ったデカさんは、木の上のカラスに声をかけます。
デカさんは、カラスの巣となって、カラスの子どもたちを温めることにしたのです。
カラスの巣は、お地蔵様のすぐ後ろに立っている木の上にあります。

一人ぼっちになったレッドが夜道を歩き続けていると、気付かぬ間に毛糸がほつれ、一本の長い毛糸になってしまいました。
それを見つけたおばあさんは、その毛糸で小さなベレー帽を編み、お地蔵様にかぶせてあげます。
そうです、ピンキーがいる、あのお地蔵様です。

駅の「おとしものばこ」を一緒に旅立った5人は、それぞれのホームにたどり着きました。
裏表紙では、5人が一瞬すれ違うシーンが描かれています。
ことばは発しなくても、5人の間に何かが流れたと思います。


読み終わった後、『あぁ、いいお話を読んだなあ』と、まっすぐな気持ちで思いました。
心が温まりました。

カタッポの手袋たちのストーリーが、“創作”とは思えませんでした。
あちこちの駅の落し物の箱の中で、こういうことは日々起きているに違いない気がしてきました。
奇跡よ、たくさん起きておくれ、と祈りたくなりました。

実は私の引き出しの中には、相方の帰りを静かに待っているカタッポが3人ばかりいます。
奇跡の賞味期限はどれくらいなのでしょうか。
1人は、高校生の時に、カタッポを失ったものなのですが…。

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