第1176夜 【ないた赤おに】

【ないた赤おに】
講談社 1990年12月1日発行
原作 浜田廣介
絵 野村たかあき
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「あの人に会いたい」系のテレビ番組がありますが、もう一度会いたい絵本があるという人も、結構いるのではないでしょうか。

【泣いた赤鬼】の絵本は我が家に三冊あります。
それぞれが、優れた絵によるものだと思います。
しかしどの絵も、私の記憶に、刷り込みのように残っているものとは違います。
“元”になる記憶の絵は、実家にあった本にあったのか、どこかで読んだ本にあったのか、全く覚えていません。

私の原記憶の【泣いた赤鬼】の絵に最も近いのが、この野村たかあき氏の版画です。
どこまでも人のよさそうな赤鬼の表情。
彼が住む家や、立て札の様子。
山々の景色や、村人たちのいでたち。
それらに懐かしさを覚えます。

名の高い作家による絵が一番、とは限りません。
人は、自分が心に描く風景、すなわち、子どもの頃に見た絵の記憶に近い絵に、心惹かれるのではないでしょうか。

いずれにしても、自分を悪者にしてまで、赤鬼の望みを叶えようとした青鬼の気高い心と、彼を心配する赤鬼のやさしい心に胸打たれるのは、どの絵の本を読んでも同じです。

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さて、この絵本には、浜田廣介氏のもう一つの童話【むく鳥のゆめ】も載っています。
絵は黒井健氏です。

母鳥の死を知らずに待ちわびているむく鳥の子のいじらしさ。
そして、深い愛情で子を見守る父鳥。

黒井健氏の絵は、むく鳥に触れたような錯覚を覚えさせます。
やわらかくて、あたたかい…
か弱いけれど、しっかりしている…

枯葉が風に揺れる音を聞いては母鳥を思うむく鳥の子の頭を、叶うなら、やさしくなでてあげたくなります。
そして、何も語らずじっと子どもを見つめる父鳥に、尊敬の眼差しをおくりたい。

「童話」だからと大人が読まないのはもったいないと、いつものことですが、思います。
独特のリズムを持つ浜田廣介の童話の世界を、もっと大人も楽しもうではありませんか。

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