第1110夜 【キンコンカンせんそう】

【キンコンカンせんそう】
講談社 2010年8月6日発行
ジャンニ・ロダーリ[作]
ペフ[絵]
アーサー・ビナード[訳]
画像

これは反戦の絵本なのだから、それなりの覚悟を持って読まなければ…
肩に力を入れて絵本を手にした読者に、
『そんなに構えなくてもいいんですよ』
と言ってくれているようなアーサー・ビナード氏の訳です。


「そのころは みんな せんそうを やっていた。」
恐ろしい戦争で、昼も夜も鉄砲や大砲を打ち合い、兵隊たちがばたばたと死んでいきました。

状況は悲惨なのだけれど、読み続けようという意欲を削がれないのは、丸々とした兵隊たちの絵のおかげかもしれません。
流血も、ほとんどないといっていいほどに抑えられています。

戦争は長く続き、終わりがまったく見えません。
金属が足りなくなったために、大将が命令を出します。
国中の時計塔、教会、学校から、鐘という鐘を集め、溶かしてでっかい大砲を作れというのです。

巨大な大砲が出来上がりました。
いよいよ発砲のボタンを押すと、突然不思議な音が響きだします。

キン! コン! カン!

その音は国中にこだまします。
そして、前線の向こうからも、これまた明るい楽しげな音色が流れてきます。
キン! コン! カン!
敵もまったく同じ事をしていたのでした。

キン! コン! カン!の音が双方から賑々しく陽気に響きあうと、兵隊たちは武器を捨てて駆け寄り、抱きあいます。
「へいわの はじまりだ!」
「おめでとう!」
一人の兵士の銃の先には花が咲いています。

どちらの国の大将も、高級車に乗って逃げ出しますが、「キン! コン! カン!」はどこまでも追いかけていくのでした。


描かれている兵隊たちは、敵味方の見分けがつかないくらいそっくりです。
かろうじて衣服の色、旗印の縦棒と横棒の目印が異なるだけです。
戦争をしている人々に、根本的な違いはないのだと言っているようです。

最終的にはなんの責任も取らずに逃げる大将の姿には、痛烈な風刺を感じます。
そして、彼らをどこまでも追いかける「キン! コン! カン!」の音は、“人間の良心の音”として描かれているように思います。

実際に日本でも、戦争中にお寺の鐘などを献上しなければならなかったと聞きます。
まるでお話の中の架空の出来事のようなことを、切羽詰った人間は本当にしてしまうという、滑稽ともいえるけれど恐ろしい事実。
その愚かしさを繰り返してはならないと強く思います。
“風刺”の力を知りました。

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