第490夜 【クルトンさんとつきのパン】

【パンやのクルトンさん】
福音館書店 こどものとも年中向き 通巻165号 1999年12月1日発行
宮島千夏 さく
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絵本をめくって、クルトンさんが町の広場でパンを焼いているページを見たとたん、とても不思議な感慨を覚えました。
ずいぶん昔、まだ子どもだった時に、こんな風に色とりどりの絵を見てうっとりしたことが確かにあった気がしたのです。
無条件で幸せな気持ちになれたことも思い出しました。
それは今でも同じでした。
鮮やかな色にあふれた町の絵を見ただけで、いやなことが吹き飛ぶようでした。

それにしても、クルトンさんの気前のよさには脱帽です。
普通、最初出会った鳥に、パンの巣を焼いてあげたとして、それをうらやんで同じことを要求する二羽目以降の鳥には簡単にパンを焼いてあげたりしませんよね。
違うんです、クルトンさんは。
二羽目なんてもんじゃありません。
団体でやってきた鳥たち全てに、それはそれはおいしそうなパンの巣を焼いてあげちゃうんです。
このページの絵、いつまででも見つめていたいくらいです。

つい先日、毎月一回、違った種類のパイが届けられるという通販に申し込んだ私を母に持つ息子が、「お母さんの好きそうな絵だなぁ」と言いました。
その通りです。

クルトンさんの気前のよさはまだまだ続きます。
池に落ちてびしょぬれのキツネのために、パンで洋服を焼いてあげたクルトンさん、「ぼくたちにも!」と押しかけた数え切れないほどたくさんのキツネたちにも、独り残らずパンの洋服を焼いてあげます。
靴や帽子、手袋まで!

山の麓で鳥たちに、山の中腹でキツネたちに、それぞれパンを惜しみなく焼いてあげたクルトンさん、山のてっぺんでは不眠に悩むクマに、パンで布団を焼いてあげます。
クマはこの山に一頭だけだったようで、布団は1セットですみました。

鳥やキツネはおいしいパンを食べてしまいますが、クマだけはパンのお布団でぐっすり眠ったままです。

クルトンさんは次の町に向かって歩いていきます。
私の町に来てくれないかしら・・・
絵本を読んだ人なら誰でもきっと思います。

絵本を閉じて裏表紙を見ると、おやおややっぱりクマさんもおいしいパンを食べずにはいられなかったようです。
とっても幸せそう・・・。


【クルトンさんとつきのパン】
福音館書店 こどものとも年中向き 通巻193号 2002年4月1日発行
宮島千夏 さく
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クルトンさんの活躍の場は、遂に宇宙にまで拡大しました。

ある夜、星からの要請を受けたクルトンさんは、月にパンを焼きに行くことにします。
パンで作った気球に乗って月までのぼっていくと、かわいい星たちが迎えてくれます。
青白く元気のない月のために、クルトンさんは、雲を混ぜてふっくらパンを作ります。
パン作りを手伝っている星たちのかわいらしいこと!

クルトンさんの七つ道具の一つ、パン焼き釜から大きく膨らんだパンがパーンと飛び出し、月の口の中にパクッと飛び込みます。
おいしいパンをいくつも食べているうちに、月はすっかり顔色(?)もよくなり、夜空に明るく輝くようになりました。

大役を果たしたクルトンさんは無事に地上に戻ります。
あれ?
気球のパンの形がちょっと変わっているぞ、と思ってページをめくり返してみたら、ボーっとしているうちに、星たちが気球のパンをパクパク食べていたのでした。
いやはやなんともかわいらしい。

今度こそクルトンさん、私の町に来てちょうだい。
またしても、みんなそう思っているに違いありません。


【クルトンさんとはるのどうぶつたち】
福音館書店 こどものとも年中向き 通巻312号 2012年3月1日発行
宮嶋ちか さく
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またしても、気前の良さ抜群のクルトンさんです。
春になって山にやってきたクルトンさんは、山の動物たちのために、とにかくひたすらパンを焼きます。
ウサギにだったらにんじんパン、タヌキたちにはポンポコパン、リスたちにはひまわりパン…
一人一個、なんてもんじゃありません。
いくらでも、といった感じです。

動物たちと一緒に、どんどん山を登っていくクルトンさん。
ふと気付くと、先頭を歩いているのは、なんとパンを焼く窯ではありませんか。
赤い靴を履いた足が二本ついている窯は、見ようによっては、マジックショーの人体切断の失敗で切り離されちゃった下半身のようです。
一見グロテスクにも見えるこの窯こそ、クルトンさんのパン作りには不可欠の物。
その存在感が不思議な魅力になっています。

さまざまなパンを食べている動物たちの、なんて幸せそうなこと。
今回もその幸せが、読んでいる私に伝染しました。
(2012年10月 書き加え)


【クルトンさんと パンのきかんしゃ】
福音館書店 こどものとも年中向き通巻343号 2014年10月1日発行
宮嶋ちか さく
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クルトンさんを、もはやただのパン屋さんとは呼べません。
ある意味“ヒーロー”です。
困っているものを助けまくる。
それも、「こうしてください」という願いを叶えるというレベルから、「どうしたらいいのか分からない」という人に救いの手を差し伸べるという次元にまで到達しています。
できないことはないんじゃないかと思うほどです。

今回は、列車の故障で足止めをくっていたサーカスの団長のために、なんとパンで機関車を作ってしまいます。
初め、駅の前でパンを焼き始めた時には、弱っている団長さんとトラの子どもを、おいしいパンで元気づけてあげるのかな、くらいに思っていました。
それが、いろんなパンが焼かれていったと思ったら、こちらの予想などはるかに超えて、機関車という形になったのです。

山あり川ありの小さな町を、パンの機関車が煙をはいて走っていく風景は、いつもながらワクワクするものです。
途中、村の人たちを乗せるため、オープンの客車もたくさんつなげました。
もう、夢のような光景です。

おかげで団長たちはサーカスの開園に間に合いました。
お客さんも大勢やってきました。
クルトンさんは、サーカスのためにパンの特大トランポリンを作っただけではなく、食べるためのパンもたくさん焼いてみんなに振る舞います。
そうして、喜んでいるみんなを背に、とっても潔く、次の町に向かって歩き出すのでした。
カッコいいーっ!
やっぱり“ヒーロー”と呼ばせていただきましょう。
(2015年7月 書き加え)

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