第400夜 【かえるをのんだ ととさん】

【カガカガ】
福音館書店 こどものとも 通巻425号 1991年8月1日発行
日野十成 文
斎藤隆夫 絵
ふしぎなことがいっぱいの とおいむかしのものがたり
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“ふしぎなことがいっぱいの”というキャッチフレーズにウソはありません。
不思議じゃないことを探すほうが大変。

「あるひ、いしと とりが むすばれて、ひとりの こどもが うまれた。」
・・・・ねっ?!

このこどもが“カガカガ”、神のおつかいです。
表紙の真ん中にいる、赤い三角の彼です。
赤くて三角の頭からいきなり毛むくじゃらの腕や脚が出ているのもそれなりに不思議ですが、何といってもすごいのは、どんなヘビより長いへそを丸めて箱に入れ、長いしりの穴をぶら下げて歩いているってところではないでしょうか。
へそは箱に入っているので目立ちませんが、ほとんどしっぽと言っていいようなチューブ状のしりの穴は、ちょっと気になります。
このしりの穴、実は悲しい運命をたどるのです。

“カガカガ”に、肉の番をするように言いつかっていたしりの穴は、泥棒がやってきたことをちゃんと伝えますが、“カガカガ”は気づかずに眠りこけてしまいます。
自分が起きなかったことは棚に上げ、しりの穴を責める“カガカガ”。
怒ってしりの穴を火であぶってしまいます。
そうしてそれを次々に食べ、ミンクにあざ笑われるのです。
「なんて あわてものだろう」

自分のしりの穴を食べちゃう人がいたら、ミンクじゃなくてもあざ笑うでしょうね。
できればの話ですが。
TVチャンピオン「あわてもの大会」優勝間違いなしです。

へそはへそで、ミンクに食いちぎられてばらばらにされます。
しかし、このへそのかけらが一つずつ、ジャガイモだのトマトだの米だのに変えられ、そのおかげで私たちは今それらを食べられる、ということなのです。

納得いくような、いかないような・・・やっぱり「ふしぎなことがいっぱい」なのでした。

絵もまた不思議な紋様のようで、“ふしぎさ”倍増です。


【まほうつかいのでし】
福音館書店 こどものとも 通巻435号 1992年6月1日発行
ゲーテのバラードによる
上田真而子 文
斎藤隆夫 絵
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まず言いたいのは、魔法使いの弟子が身につけているガウン(マント)と帽子の美しさです。
鮮やかな赤の表に対して、濃い緑の裏地。
どちらにも細やかな模様がほどこされています。
先生が留守の間に羽織りたくなった弟子の気持ち、わかります。

子どもの頃、母の防寒マント(雪国仕様)を、ドキドキして羽織ったものです。

さて、主人公は魔法使いの弟子。
先生が留守にしたすきに、呪文でほうきに水汲みをさせます。
ところが、止め方を知らないので、家の中が水浸しになります。

思い余ってほうきを斧で真っ二つにしますが、ほうきは壊れるどころか、二つになって更に水汲みを続けます。

縦横無尽の階段を疾走するほうきたちの躍動的なシーンは、まるで映画を見ているみたいです。

家の中が大洪水になり、とうとう弟子は先生に助けを求めます。
さすがは先生、あっという間に帰ってきて、呪文を唱えてすべてを元通りにします。
よかったよかった。

あれっ?
なぜかほうきは二つのまま…。

魔法使いの家の中には、家具や置物を含め、様々なものがあるわけですが、それらの持つ目が雄弁です。
ほうきにしてもそうですが、目は口ほどにものを言うことを改めて実感します。


数週間前、新聞にゲーテの格言集のことが載っていたので、さっそく図書館から借りてきました。
さすがはゲーテ、いいこと言っています。
「感覚は欺かない。 判断が欺くのだ。」
「人は努めている間は迷うものだ。」
「目標に近づくほど、困難は増大する。」

こんなのもありました。
「耳ある者は聞くべし。
金ある者は使うべし。」

ことあるごとに私が、「ゲーテはこう言ってる」だの「ああ言ってる」だのと娘に言っていたら、娘が、「ゲーテ、格言、言いすぎ!」と言いました。
確かに。
本になるくらい格言を言っているんですから、もしかしたら、生きている時には近くの人にちょっとうるさがられていたかもしれません。
それとも、実際ゲーテは周りの人間に面と向かって言っていたわけではなくて、後の世の人たちが、ゲーテの残した作品から掬いだしたものなのでしょうか。
ゲーテさん、失礼なことを言ってごめんなさい。

なぜ突然ゲーテの話かというと、このお話の元が、ゲーテのバラードであると、折込付録に書いてあったからなのでした。


【ずいとんさん】
福音館書店 こどものとも 通巻540号 2001年3月1日発行
日野十成 再話
斎藤隆夫 絵
日本の昔話
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ある山寺でのお話。
おしょうさんの留守中、一人でご本尊様にお経をあげることになった小僧の“ずいとん”。
そこへキツネが一匹やってきて、ご本尊様に化けてしまい、まったく見分けがつかなくなります。
二つ並んだご本尊様の前で、機転のきく“ずいとん”が言います。
「うちの ごほんぞんさまは、おきょうを あげると、およろこびになって したを ぺろりと おだしになる。」

“ずいとん”が、「なみあむだぶつ」と唱えると、片方のご本尊がぺろりと舌を出します。
騙したはずのキツネが騙されました。
『しまった!』というキツネの表情が愉快です。

すっかり西洋風な斎藤隆夫氏の絵を見てきましたが、こんなにも和風にしっくりくるなんて、すばらしい。


【かえるをのんだ ととさん】
福音館書店 こどものとも 通巻574号 2004年1月1日発行
日野十成 再話
斎藤隆夫 絵
日本の昔話
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胃袋の中のお話なのに、宇宙的というのかブラックホール的というのか・・・
スケールが大きいんだか小さいんだか・・・
でも、ハッピーエンドだからいいです。

昔あるところに仲のいい“ととさん”と“かかさん”がいました。
ある日、腹の痛くなった“ととさん”に、“かかさん”は、「お寺のおしょうさんのところへ行ってきいてみるといい」と言います。
以降、“かかさん”のせりふは、これ一つです。

腹の中に虫がいるのだろうから、カエルを飲み込んで、虫を食ってもらえと言われ、“ととさん”はカエルを飲み込みます。
腹の痛いのは治りましたが、腹の中をカエルが歩くので気持ちが悪いと言うと、“かかさん”は例のせりふです。

今度はおしょうさんは、カエルを退治してもらうためにヘビを飲み込めと言います。
こうして、次々に、ヘビに対してはキジ、キジに対しては猟師、猟師に対してはオニ、を飲み込めとのおしょうさんの指示に、“ととさん”はとにかく素直に従います。

終始苦しみっぱなしの“ととさん”に比べ、ケロリと次のミッションを告げるおしょうさん。
そして、いろんな仕事をこなしながら、「おしょうさんにきけ」としか言わない“かかさん”。
“ととさん”への同情票は爆発的に増えているはずです。

しかし、最後はさすがに知恵者のおしょうさん、“ととさん”の口めがけて豆をまき、「オニはーそとー」とやって、オニを“ととさん”の腹から出してくれます。
結局、“かかさん”の、「おしょうさんの言うことをききなさい」というアドバイスは大正解でした。
めでたしめでたし・・・・なのかな?

最後のページで、囲炉裏をはさんで向き合い、平和にご飯を食べている“ととさん”と“かかさん”を見たら、やっぱり“めでたしめでたし”なのでした。


【あたまがいけ】
福音館書店 こどものとも 通巻696号 2014年3月1日発行
日本の昔話
日野十成 再話
斎藤隆夫 絵
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洋物だろうと和物だろうと、斎藤隆夫氏の絵はすてきです。
今回は、ムサイひげ面を描かせたら、斎藤氏の右に出るものはいないんじゃないかと何度も思いました。

昔、ある村に、ものぐさもくべえと呼ばれる男がいました。
その名の通り、とにかくものぐさ。
柿の木に実が生っても、はしごをかけて採るのも、落ちた柿の実を拾うのもめんどうという徹底ぶり。
考えた挙句、柿の木の下に、口をあんぐりと開けて立ち、柿の実が落ちてくるのを待っていました。

しかし、柿の実はもくべえの口には入らず、頭の上に落ちました。
柿はつぶれて、頭の上には柿の種が一つ。

もくべえが、なにしろめんどうくさがりですから、そのままにしておくと、種から芽が出て、どんどんと成長します。
やがて大きな柿の木になり、柿の実がたくさん実ったので、もくべえは町へ売りに出かけます。

あら、めんどうがりのもくべえらしくない…
と思いましたが、考えたら、ただ町へ歩いて行っただけのことです。

頭の柿とは珍しいと、町の人がたくさん買ってくれたおかげで、もくべえは大儲け。

けれども村の人たちは面白くありません。
まじめに畑仕事をしているのに貧しいままの人たちからしたら、そりゃそうです。
もくべえが眠っている間に、柿の木を根元から切ってしまいます。

するとその切り株に、色々なキノコが生えて、またしてももくべえは大儲け。
村の人たちは、今度は切り株を引っこ抜いてしまいます。(もちろん寝ている間に)

するとその跡に大きな穴がぽっかり。
そこに雨の水がたまって池になります。
池にはフナやコイが泳ぎ出し、そこへカモがやってきます。

もくべえは、めんどうくさがりですが、どうやら商魂はたくましいようで、カモが眠ったすきに、一羽ずつ捕っては腰ひもにぶら下げます。

しかし、そんなにうまくはいかないものです。
一羽のカモが目を覚まし、空に飛び立つと、他のカモも驚いて、つながれたまま飛び立ちます。
となると、当然もくべえもカモと一緒に空の上。

「ものぐさもくべえ それっきり、どこへ いったか わからない。」

こういった変わり者に対する自分の立ち位置を決めるというのは難しいものです。
同情するべきなのか否か…
そう思っていたら、折込付録の「編集部だより」に、
「禍福はあざなえる縄のごとし。
もくべえさん、どこかでまたいいこともあるでしょう。」
と、実に朗らかなコメントを発見し、気が楽になりました。

実は、頭から柿の種が芽を出した時、スイカの種を食べると、へそから芽が出てくるという話を思い出していたのですが、そのことも「編集部だより」に書いてあります。
もちろんどなたかは知りませんが、会えばきっと話が弾むだろうなと思いました。
(2014年3月 書き加え)

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