第334夜 【すんだことは すんだこと】

【すんだことは すんだこと】
福音館書店 1991年5月1日発行
ワンダ・ガアグ 再話・え
佐々木マキ やく
画像

絵本の裏表紙に、「対象年齢~歳以上」といった表示を見ることがありますが、この絵本は、「対象者=妻帯者」と書きたいくらいです。
つい先週、主婦の仕事をお金に換算するとという新聞記事を読みました。
アメリカの人材情報会社が計算したもののようですが、なんと主婦が行なう家事をお金に換算すると、一年間におよそ千二百万円になるというのです。

金額を見てびっくりですが、あまりにも大きな数字で、『ほんとに?』と思わないでもありません。
もしも主婦の仕事にまったく理解を示さない夫をお持ちでお悩みの方がいらしたら、こんな途方もない数字を見せて逆効果を招くより、むしろこの絵本を読んでもらうほうが、刺激は過激ではない代わりに、ジワリと効きそうな気がします。


ここまでの文章を、私は12日の夜にすでに打ち込んでいました。
翌13日、姪の臨終に立ち会おうとは夢にも思っていませんでした。
14日の夜に、弟の家からいったん家に戻りました。
弟夫婦や私の両親、妹と一緒だった時にはまだ平常心を保つことができたのですが、家に戻って家族が帰るまでの時間、一人になったらなんともたまらない感情が押し寄せてきて、目がずっと満ち潮の状態になりました。

そのまま何もせずにいると、自分がどんどん弱る一方のような気がして、パソコンに向かい、14日の分のブログを発信しました。
15日は友引でしたので、16日に通夜、17日に告別式を行ないました。
昨日18日に両親を大宮の駅まで送り、家に戻りました。
今日は月曜、子どもたちのお弁当作りも再会。
タイムテーブルがいつもの日常に戻るのをきっかけに、気持ちも少しずつ上昇させていかなくてはと思っています。

佐々木マキ氏の絵本をまとめて紹介しています。
それにしてもこのタイトル、間が悪いというのか・・・。
順番を変えようかとも思いましたが、このことばを投げやりな意味ではなく、良い方に解釈しようと、そのまま紹介することにしました。

「済んだことは済んだこと」
いつまでも悲しみの沼に足を取られていないで、自分に与えられた生を精一杯生きることが姪への供養にもなると思うことにしましょう。


絵本の主人公はフリッツルという名のおやじさん。
おかみさんの名はリージー。
二人の間にはキンドリという女の赤ちゃんがいます。

三人は、スピッツという犬、牝牛一頭、ヤギ二頭、ブタ三匹、ガチョウ十二羽を飼って暮らしていました。
おやじさんは毎日いっしょうけんめい畑仕事をしています。
掃除や料理、バター作りに動物の世話、赤ちゃんのめんどう、家の仕事をしているおかみさんも毎日大変でした。

ある時おやじさんは、自分(男)の仕事がどんなにきついか、そしてそれに比べておかみさん(女)の仕事がどんなに楽であることかと訴えます。
それを聞いたおかみさんは、次の日から仕事を取り替えっこしてみようと提案します。

次の日、おかみさんは野良仕事に出かけます。
家に残ったおやじさんは、家事なんか楽勝と高をくくり、朝ごはんにソーセージを炒めます。
コップ一杯のりんご酒を飲もうと、地下室へ降りていき、大きな樽の栓を引き抜きます。
物音がしたので見てみると、犬のスピッツがソーセージをくわえて逃げていくではありませんか。
それを追いかけて戻ってみると、地下室はりんご酒で一杯。
おやじさんは頭をかいて言います。
「しょうがない。すんだことは、すんだことだ」

おやじさんは今度はバター作りを始めます。
そこで、朝から牝牛に水をやっていないことに気づきます。
赤ちゃんのキンドリのめんどうもみなくてはならないので、お腹がぺこぺこの牝牛を草地に連れて行くのはあきらめ、屋根で草を食べさせることにします。
牝牛を屋根に上らせている間に、キンドリがバターの桶を倒し、中からバターがこぼれ、キンドリがバターにまみれてベトベトになります。
おやじさんはまたしても、
「しょうがない。すんだことは、すんだことだ」

こんな調子で、案の定スープ作りも大失敗。
おかみさんのリージーが仕事を終えて家に帰った時には、牝牛は屋根からぶら下がっているし、畑の作物は動物たちにことごとく食べ尽くされているし、キンドリはベトベトだし、地下室はりんご酒であふれているし、台所は散らかっているし、当のおやじさんはスープなべの中でもがいているし、本当にまったくひどいありさま。

スープなべから救出されたおやじさんがおかみさんに言います。
「おまえさんのいうとおりだよ。おまえさんのしごとは、ちっとも、らくじゃない」

おかみさんが言います。
「はじめは、ちょっとたいへんだけど、でもあしたは、あんた、もっとうまくやれるかもしれないよ」

「とんでもない!」おやじさんは大きな声で言います。
「すんだことは、すんだこと。おれの家のしごとも、きょうかぎりだ。たのむよ、リージー、おねがいだから、のらしごとに、もどらしておくれよ。おれのしごとのほうが、おまえさんのよりたいへんだなんて、もう、けっしていわないから」

この台詞を聞いて、胸がスーッとしたのはリージーだけではないかもしれませんね。

リージーの返事がすばらしい。

「そうだねえ」
「そういうことだったら、あたしたちもきっと、なかよく、しあわせにくらしていけるねえ」

隣の芝生は青いと言います。
自分の仕事の方が大変、とは、夫婦間のみならず、職場でも思うことがあるものでうす。
しかし、代わってみるとそうではないことがわかったりします。

共働きだとむしろ、妻の方が「私の方が大変」と思うことが多いでしょうね。
実際、どちらかに負担が多くなることは致し方ないところもありますが、パートナーがそれをわかってくれていることが何よりの救いになるはずです。

絵本のおやじさんが最後に言った台詞が聞ければ、おかみさんも、いえ、お互いが幸せに暮らせるというものです。

「対象者=妻帯者」ではなく、「対象者=配偶者をもつすべての人」とするべきでしょうね。

佐々木マキ氏の絵本は、第199,200夜、第316~333夜、第337~339夜でも紹介しています。
ワンダ・ガーグ氏の絵本は、第579夜でも紹介しています。

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