絵本千夜一夜

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zoom RSS 第1436夜 【夏がきた】

<<   作成日時 : 2017/08/10 18:17   >>

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【夏がきた】
あすなろ書房 2017年6月30日発行
羽尻利門 作
画像

おととい、PARCOの中の紀伊国屋書店に行きました。
そこで見つけた絵本です。

セロファンでくるんでありましたので、中を確かめることができませんでした。
店員さんに頼めば、きっとセロファンをはがし、快く見せてくれたでしょうが、そうはせずに購入を決めました。

この表紙の力が、躊躇させなかったのだと思います。

これと似たような風景の中を、子どもの私は生きていた、
この空気、ここにある音、描かれている人々の動き、それらを自分は確かに脳内で再生できる、
そう感じたのです。

そして、真っ青な空の部分に、シンプルなタイトル。

一種の一目ぼれだったでしょう。


家に帰って見ると、表紙だけではありませんでした。
すべてのページで、自分の脳が活性化し、サイレント映画に弁士が音を与えていくように、様々な音が頭の中で再生されます。

再生されるのは音だけではありません。
気温、臭い、風…

気が付けば、自分の感覚が総動員で活動していました。

そうさせてくれているのは、誠実に描き込まれた絵と、そして最小限のことばです。

例えば、最初の場面は、瓦屋根の下の窓から見える子ども部屋です。
瓦はもちろん、すぐ隣に立つ木、ちょっとだけ見えている物干しざおや御簾やのれん、そうして和室の畳…
一つ一つがどれも、とても丁寧に描かれています。

このページにある文字は、
あさから げんきな セミのこえ
のみ。

自動的に、私の頭の中にはセミの声が響きます。

少しだけ風を感じます。
なぜなら、物干しざおに掛かっているてるてる坊主が、かすかに揺れているように見えるから。

繁った木の葉っぱからは、ムンと夏の香りが漂います。

眠そうに眼をこすって、たった今起きた男の子は、まぎれもなく、遠い日の自分です。


次のページからも、眠っていた記憶から、懐かしい音がよみがえってきます。

お父さんが軒下に吊るしている風鈴
チリン チリン

お母さんが片手で持っている容器の中で、なみなみと揺れている麦茶
タポン タポン

コップの麦茶を、一気に飲み干している男の子
ゴキュッ ゴキュッ

その傍らでリボンを吹き上げながら回っている扇風機
ブオォーン

限界まで口をあけ、あくびしているねこ
クァーッ

年をるということは、それだけたくさんの経験をしてきたということ。
それは、つまり、それだけたくさんの音の記憶を蓄えてきたということ。

年をとると、こんないいことがあるんだ…


細部のていねいな描写には、手を合わせたくなるほどです。
畳なんか、もう、スゴイとしか言えません。

田んぼの稲も、松林の木々も、何もかもです。


どうぞお手に取って!とお勧めしたくなります。

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