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【ふくねずみ すごろくばなし】 福音館書店 こどものとも 通巻430号 1992年1月1日発行 わたり むつこ さく ましま せつこ え 先ほど、子どもたちのお年玉を郵便局に貯金してきました。 我家の子どもたちは、祖父母や親戚からお年玉を受け取ったらすぐに、となりにいる私に「ハイ」と手渡すことになっています。 21歳の娘も18歳の息子もです。 お年玉は貯金するもの、二人はそう信じて成長してきました。 さすがにこの二・三年、一部は貯金せずに遣いたいと言うこともありますが、それでもほとんどは貯金します。 娘はこの貯金で車の免許をとり、成人式の振袖の一部を支払いました。 それでもまだ三十数万の残高です。 お年玉をもらい始めること3年遅れの息子の残高も七十万を越えました。 親の私たちは、彼らにお年玉をあげたことは一度もありません。 つくづく自分の親や親戚の皆様に感謝いたします。 絵本の表紙をめくったらば、すごろくにはなくてはならないさいころと一緒にお年玉袋が二枚描かれてあったものですから、いきなり脱線してしまいました。 しかも、主人公の男の子の名前が息子と同じ“ゆうた”なものですから。 娘の名は“あさこ”ではありませんが、この姉弟が我子とシンクロしました。 二人は初詣に行った天神様でおみくじをひきます。 (我家の子どもたちもおみくじが好きで、神社へ行くとひきたがります。) “ゆうた”のひいたおみくじには「ぼうけん大吉」と書かれてあり、裏には地図がありました。 地図にしたがって行ってみると、「ふりだし」の立て看板があり、はっぴ姿のネズミたちが集まっています。 二人はネズミたちの引く人力車に乗って、松林を過ぎ、竹林をさわさわくぐり、梅林を駆け抜け、「ふくねずみちょう」へ向かいます。 なんともいえない和の紅色に縁取られた枠を一行は進むのですが、いかにもすごろくを進んでいく絵の構成です。 ふくねずみ頭首“ふくきち”が言うには、除夜の鐘が107つしか鳴らなかったせいで、消えるはずのいたずら小鬼が「ふくねずみちょう」に飛び込んできて困っているとのこと。 二人に小鬼退治を手伝ってほしいと言うのです。 “ゆうた”と“あさこねえさん”はさいころをふりながら、いたずら小鬼を追います。 あちらこちらでいたずらをしては逃げる小鬼をすごろく形式で追いかけていくのですが、全編これこそ日本のお正月という風景が続きます。 羽根突きに独楽まわし、まりつき凧揚げカルタとり、竹馬をしている子もいます。 先日の新聞の四コマまんがで、これらの遊びを「絶滅危惧遊戯」と言っていました。 『うまい!』なんて感心している場合ではありません。 こういう遊びは絵本の世界だけのことになりつつあります。 獅子舞にしてもそうです。 少なくとも我家の子どもたちは、あのカタカタいう獅子舞の口に頭をかまれたことはありません。 さて、いたずら小鬼は凧に乗って飛んでいき、うっかり自分で108つ目の鐘を鳴らしてしまい、消えてしまいます。 “ゆうた”と“あさこねえさん”が乗っていた宝船の七福神たちは、めでたしめでたしで初笑い。 二人は“ふくきち”さんの家のお正月の宴に招かれます。 この光景は私には懐かしいものです。 つい数年前まで、私の実家の正月はこうでした。 座敷に家族がそろい、一人一人がお膳でご飯をいただくのです。 家長である父のお膳の脚はとても高く、私たち女子どものお膳はこの絵本のお膳と同じで低いものでした。 座敷で新たまって食事をすることで、『新年を迎えた』という節目がクッキリつけられたような気がします。 それがなくなって、なんだかヌルリと新年を迎えているこの何年かをとても物足りなく感じます。 「ふくねずみちょう」では今もまだこういう新年を迎えているのでしょうか。 すごろくといえば、去年、2年生の進路学習ですごろくを使いました。 6人の班で一つのすごろくに向かい、一人ずつ順にさいころを振ります。 各自、自分の駒(消しゴム)を進めていく先にあるのは、進路に関する質問です。 例えば、「共学と男女別校、どっちがいい?」、 「校則が厳しいのとゆるいのとどっちがいい?」、 「部活とバイト、どっちを優先?」といった二者択一のものや、 「人生とは?」、 「幸福とは?」といった深い質問、 「3つ戻る」、「1回休み」といったすごろくならではの陣も途中にあります。 質問に答え、理由を述べながらゴールを目指すのですが、生徒たちはお互いの答えを楽しみ、和気藹々と有意義な時間を過ごしていました。 ちなみに、このすごろくの縮小版を家に持ち帰った私は、“とんでん”で家族と夕食をとりながら、家族4人でこのすごろくを楽しみました。(隣りのテーブルのご夫婦にジロジロ見られるのもなんのその) すでに高校受験は過去のものとなっている私たちでしたが、娘は就職、息子は大学に置き換え、私たち夫婦は職場のこととして話すことで、普段お互い聞くことのない話が聞けて、実に楽しかったのでした。 特に、「幸福とは?」のところに駒が止まった夫が、思いのほか真剣に考えて答えたので、娘は「お母さんとはそういう話を時々するけど、お父さんの考えを聞くのは初めてだったかも・・・」と感慨深げに言いました。 「すごろく」には不思議な力があるようです。 何のとっかかりもなくされた質問に答えるのには抵抗があっても、「すごろく」でのことだったら、今さらの質問に対してでもなんだか素直に答えてしまう自分がいました。 惜しむらくは、このすごろく、最後を「GOAL」としてしまいましたが、やはり「ふりだし」があったら、最後は「あがり」にするべきでした。 なんにせよ、自分の中にある日本人のDNAの存在を思い知らせてくれる絵本です。 【こよみともだち】 福音館書店 こどものとも 通巻550号 2002年1月1日発行 わたり むつこ さく ましま せつこ え 日本には四季があって美しい・・・ とはよく聞くフレーズですが、改めてこうしてひと月ずつその個性(?)を思い起こしてみると、なるほど日本は季節の風物豊かな国であると感じます。 私がよく利用するスーパーのレジには、毎月折り紙でその月にちなんだものが飾られます。 7・8箇所あるレジのそれぞれに飾られるその折り紙は実に巧みにできていて、訪れるたびに感心します。 そして、『なるほど今月はコレだよね』と納得するのです。 日本人なら誰でもそう思う風物を共有している自分たちを誇らしくさえ思います。 スーパー「カスミ杉戸店」さん、ありがとう。 それぞれが一人暮らしの“1月さん”から“12月さん”、ある時それでは寂しいからと、一軒一軒たずねていきます。 「とんとんとん あそぼじゃないか 2がつさん」 こんな具合です。 “1月さん”は顔が羽子板のりりしい青年です。 富士山に宝船、おせち料理にお供え餅、めでたい鯛に空舞う鶴、お正月気分満点の部屋(ページ)です。 “2月さん”は雪だるま、“3月さん”はかわいらしい女の子、おひな祭りにご招待。 “4月さん”は桜の精。 一気に洋風のいでたちになりますが、両手に持っているのは三色だんご。 “5月さん”は予想通りに鯉のぼり。 みんなを乗せて威風堂々空を駆け、雲にのぼって滝登りです。 “6月さん”は雨のしずく。 キャラクター化の初登場。 “7月さん”は元気なお日さま、“8月さん”は包容力たっぷりの入道雲、“9月さん”は台風だけれどみんなにぶどうをプレゼント。 さぞかし絵にしにくかったでしょう“10月さん” なにしろ「紅葉」ですから。 色づいた葉っぱのパンツをはいたステキな女性が“10月さん”になっていることは、10月生まれの私としては大変うれしい限りです。 “11月さん”はかわいい木の実、“12月さん”は・・・おやおやサンタさんじゃありませんか。 日本独特の風物や季節の中に突然洋物が飛び入りしてもオッケーよ、というところも、考えてみれば日本人らしい。 最後はみんなで宴のテーブルを囲みます。 これまた和洋折衷、豪華です。 みんなが引っ越した「こよみのいえ」は、12の扉、すなわち12の部屋がそろっていて、みんなが仲良く暮らせる大きな家でした。 これなら寂しくないですね。 今年も12の扉を一つずつ開けながら、季節の移ろいや風物を楽しんでいくことにしましょう。 【そでふりすずめ】 福音館書店 こどものとも 通巻496号 1997年7月1日発行 わたり むつこ さく ましま せつこ え 1月に七夕のお話はどうなのかとも思いますが、雪の心配をしながら七ヶ月先のことを想像してみるというのもオツかもしれません。 小スズメの兄弟“ちいち”、“ちいよ(メス)”、“ちいぴ”は、ある朝いつものようにお母さんにご飯をねだります。 ところが母さんスズメは目を覚ましません。 心配した三羽は、物知りの“ふくろうじい”に相談します。 “ふくろうじい”の言うことには、七夕の夜、天の川に流れる水を飲ませれば、母さんスズメは目を覚ますというのです。 「おまえたちには とうてい むりじゃ」 と言われながらも、三羽は空高く飛ぶ練習をします。 七夕の日、天からひらひらと浴衣が舞い降りてきます。 それを着た三羽は、軽々と空高く舞い上がることができました。 星がまたたく空の上、三羽は袖が千切れるほど振り続けます。 もはや力尽きるかという時、天に住むオオハクチョウが三羽を背に乗せ、天の川へと連れて行ってくれます。 そこでほっぺにいっぱい水を含むと、三羽は地上に戻ってきます。 小スズメたちが天の川の水を母さんスズメの口に注ぎ込むと、母さんスズメはパッチリと目を開きました。 そして、子どもたちの大好きな混ぜご飯を作ってくれました。 幸せに満ちた空間(竹やぶの巣の中)、このページをいつまでも見ていたい気持ちになりました。 |
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