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【やまこえ のこえ かわこえて】 福音館書店 こどものとも年中向き 通巻78号 1992年9月1日発行 こいでやすこ さく キツネのきっこちゃんシリーズの1作目です。 途中ちょっと、【手ぶくろを買いに】を思い出しました。 「こわくない こわくない」 とおまじないを唱えて、きっこちゃんはある晩遅く、町まで買い物に出かけます。 手には買い物籠と葉っぱを一枚持っています(表紙の絵)。 山を越えていくと、月が声をかけます。 きっこちゃんが、町まで買い物に行くことを教えると、一緒に着いていこうと言ってくれます。 暗い夜道を一人で歩くのは、大人でも怖いものです。 お月様が着いてきてくれるなら、少し安心です(読者である私も)。 野を越えていくと、ふくろうの“ろくすけ”が声をかけます。 町の豆腐屋さんへ買い物に行くことをきっこちゃんが教えると、一緒に行こうと言ってくれます。 夜に強いふくろうがお供になって、益々安心です。 川を越えていくと、いたちの“ちい”と“にい”が声をかけます。 豆腐屋さんに油揚げを買いに行くことを教えると、二人も着いていこうかと言ってくれます。 お供は多いほうが安心です。 一行は町の豆腐屋さんにやってきました。 秋の満月の夜に、きっこちゃんが油揚げを100枚買いに来るのは恒例のこと、豆腐屋さんはちゃんと用意して待っていてくれました。 おまけで110枚の油揚げを受け取ると、きっこちゃんはお代にキノコと栗、そしていたちの“ちい”と“にい”が川魚をおまけに添えました。 一緒に来たみんなもうれしそう。 お月様はまるで昼のように明るく光っています。 さて、帰り道です。 川を越えて行こうとすると、川岸で誰かが、「こわいぞ〜 こわいぞ〜 あぶらげ ぜんぶ おいていけ!」と脅かします。 お月様がピカッと光を投げつけると、三角耳の誰かが逃げていきます。 野を越えて行こうとすると、草むらでまた誰かが脅かします。 今度は「あぶらげ はんぶん おいていけ!」になっています。 ふくろうの“ろくすけ”が羽をバタバタさせて威嚇すると、太いしっぽの誰かが逃げていきます。 山を越えて行こうとすると、カラマツの陰で誰かがまたまた脅かします。 あぶらげは10枚でいいことになっています。 いたちの“ちい”と“にい”がおならをおみまいすると、とがった鼻を押さえた誰かが逃げていきます。 きっこちゃんは無事に家に帰りつき、一緒に行ってくれたみんなにお礼を言います。 その後、ふくろうといたちは、きっこちゃんがいなりずしを作るのも手伝ってくれます。(お月様は窓の外で見守っています。) 次の日は稲荷山の秋祭りです。 川越えて、野越えて、山越えて、みんなきっこちゃんのところへいなりずしを食べにやってきます。 “きっこのいなりずし”はお祭りの名物なのです。 最後のページに、「こわいぞ〜 こわいぞ〜」と言いながら、いなりずしを食べているちっちゃなキツネがいます。 この子は実は絵本の最初から、ず〜っと一緒だったんです。 大人が一人で読んでも楽しい絵本もありますが、この絵本はやはり子どもと一緒に読んだら一層おもしろいだろうなと思います。 【おなべ おなべ にえたかな?】 福音館書店 こどものとも 通巻468号 1995年3月1日発行 こいでやすこ さく 今度の季節は春です。 山向こうのおおばあちゃんのところへタンポポを摘んでいく途中、いたちの“ちい”と“にい”に会ったきっこちゃんは、おおばあちゃんのところへ二人も連れて行きます。 おおばあちゃんはスープを煮ているところでした。 山のお医者さんのおおばあちゃんが、急に呼ばれてカラスの子を診に行っている間、きっこちゃんたちはスープの番をします。 にんじんスープに塩やこしょう、バターを入れて味見をしているうちに、あまりのおいしさに、きっこちゃんたちはスープを全部飲み干してしまいます。 よく見ると、味見をしているのはきっこちゃんといたちたちだけではありません。 モグラにリス、ねずみにアリ、蝶に青虫、それからフナムシ? おなべに言われるまま(表紙でおわかりの通り、おなべには顔があります)、きっこちゃんたちはおなべに水と豆を入れ、再びスープ作りを始めます。 仕上げは摘んできたタンポポです。 おおばあちゃんが帰ってきました。 にんじんスープだったはずが、タンポポ入りの豆スープにかわっていたのでおおばあちゃんは驚きましたが、ステキな春の味だと喜びます。 みんなで春のスープをいただいて、最後はポンポコのお腹で野原に寝転んでいます。 満腹〜! 青虫のお腹も膨らんで、勾玉のようになっているのが愉快です。 【おおさむこさむ】 福音館書店 こどものとも 通巻538号 2001年1月1日発行 こいでやすこ・さく お次は冬です。 きっこちゃんといたちの“ちい”と“にい”は、おおばあちゃんにすてきなマントを作ってもらいます。 裏地が赤で、表は緑、クリスマスカラーです。 マントがうれしくて、三人はおおばあちゃんが止めるのも聞かず、そり遊びに出かけます。 おおばあちゃんは、「雪ぼうずに会っても決して寒いと言わないこと」と言って、お茶を入れた魔法瓶(!) を持たせてくれます。 森のウサギやライチョウに新しいマントを褒められた三人は、すっかりいい気分になって、「でてこい でてこい ゆきぼうず」と大きな声で歌います。 すると、岩の陰から、おおさむこさむと名のる小さな雪だるまが二つ出てきて、きっこちゃんたちと一緒にそり遊びをします。 夢中でそり遊びをしているうちに、体が温まってきた“ちい”と“にい”は、帽子やマフラー、そしてマントも脱いでしまい、“おおさむ”と“こさむ”が代わりにそれを身につけます。 熱いときには冷たいものが一番と、おおさむこさむに言われるがままに、“ちい”と“にい”はかき氷をガンガン食べます。 きっこちゃんも熱くはなりましたが、お気に入りのマントを脱ぎたくはありませんでした。 おおさむこさむが聞きます。 「みんな さむくないか?」 おおばあちゃんが言っていました。 雪ぼうずに「さむい」と言ったら、コチコチに凍らされてしまうと。 かろうじて「さむい」と言うのをこらえて二つの雪だるま(おおさむこさむ)をよく見ると、かき氷を食べるたびに大きくなっています。 きっこちゃんに雪ぼうずと見破られたおおさむこさむは、三人に寒いと言わせて凍らせてしまおうと、冷たい風をビュービュー吹きつけてきます。 “ちい”と“にい”が、こらえきれずに、「さ、さ、さ」と言うと、きっこちゃんは、「言っちゃ だめ!」と、おおさむこさむの足に、魔法瓶のお茶をかけます。 きっこちゃんは、“ちい”と“にい”をマントにくるんでそりに乗せ、一目散に逃げ出します。 おおさむこさむは怒り狂いますが、足がとけてしまったので、追いかけることができません。 すごい活劇になりました。 きっこちゃんは無事におおばあちゃんの家へたどり着くと、雪ぼうずに会ったことを話します。 凍えていた“ちい”と“にい”も、毛布にくるまり温かいスープを飲んで、すっかり元気になりました。 おおさむこさむに自分たちのマントを着せてきてしまった“ちい”と“にい”は、おおばあちゃんに新しいマントを作ってもらいました。 どうやら布が半端だったようですが、さすがはおおばあちゃん、むしろすてきな模様にして赤と緑を組み合わせています。 母はサーモンピンク、祖母は黒の、“かいまき”と呼ばれる長いマントを、冬に着用していました。 子どもの私はそれにとてもあこがれました。 そして、二人のマントをしょっちゅう借りては外に出ていました。 マントって、自分がまるで不思議な力を持ったような錯覚を起こさせてくれるので大好きでした。 【たろうめいじんの たからもの】 福音館書店 こどものとも 通巻596号 2003年8月1日発行 こいでやすこ さく そして夏です。 きっこちゃん、すいかと水着を持って登場です。 水遊びをしようと、“ちい”と“にい”の家へきっこちゃんが行くと、水の中からあがってきた二人は、きれいな緑色の石を首から提げています。 それは、泳ぎがうまくなったご褒美に、“たろうめいじん”からもらったのだというのです。 きっこちゃんもその石がほしくなりますが、泳げません。 “ちい”と“にい”の提案で、“たろうめいじん”に泳ぎを教えてもらいに泥んこ池に行ったきっこちゃん、そこに現れたのは、大きなナマズの“たろうめいじん”でした。 “たろうめいじん”の泳ぎのレッスンは、実に実用的かつ効果的に思えます。 初めは水に入らずに、泥の上で滑りながら泳ぐフォームを身につけます。 これなら、水の中で下に足がつかない恐怖心もないし、何よりとっても楽しそう。 クネクネするフォームが身についたら、“たろうめいじん”の背中に乗って川に出ます。 このやり方も理想的。 “たろうめいじん”が言う、上手な泳ぎ方の秘訣とは、 「のびのび あわてず ゆっくり」です。 グングン上達したきっこちゃんに、自分で緑の石を採りにいくように言うと、“たろうめいじん”はきっこちゃんを洞穴の前に連れて行きます。 洞穴の一番奥に緑の石があるというのです。 きっこちゃんは勇気を出して、石に向かってまっすぐ泳いでいきます。 きっこちゃんが石を手にすると、“たろうめいじん”は、長いひげで手招きをして、きっこちゃんが洞穴から浮上するのを助けます。 そして水の上に顔を出したきっこちゃんに向かって、 「たいへん よろしい! みどりの いしは きっこちゃんのもの」と言います。 “たろうめいじん”の名コーチぶりには惚れ惚れします。 「名人」の呼び名は、泳ぎの名人という意味だけでなく、教える名人ということなのでしょうね。 さりげなくいつも一緒にいたカメも、最後に一緒にスイカを食べているのがほほえましい! 裏表紙のきっこちゃんの飛び込みっぷり、見せたいくらいです。 【おべんともって おはなみに】 福音館書店 こどものとも 通巻613号 2007年4月1日発行 こいでやすこ さく これからの季節にぴったり、再び春です。 きっこちゃんと“ちい”と“にい”は、お弁当を持って花咲山へお花見に行きます。 ふくろうの“ろくすけ”を誘いに行くと、“ろくすけ”はうりぼうたちの子守を頼まれ大忙しです。 きっこちゃんは、うりぼうたちも一緒にお花見に行こうと誘います。 花咲山は花見客で賑わっています。 うりぼうたちはじっとしていません。 走り回るうりぼうたちをきっこちゃんたちは追いかけ、遂にはおんぶをして目的の場所まで行きます。 ところが目的地の大桜の下には、昼寝をしているクマがいました。 そこできっこちゃんたちは、きっこちゃんが生まれた時におおばあちゃんが植えてくれた「きっこざくら」の下でお弁当を食べることにします。 桜の桃色、木蓮と雪柳の白い花もきれいです。 みんなでお弁当を広げて食べている絵を見たら、花見が待ち遠しくなってきました。 お弁当を食べて遊んだら、帰りもおんぶをしてほしいと、うりぼうたちがわがままを言います。 そこできっこちゃんは、「ひもでんしゃにのって かえろう」と言います。 ござを縛っていた紐でひもでんしゃにすると、うりぼうたちもよろこんで乗り込みます。 結局、終点の“ろくすけ”の家まで、自分たちで歩いて帰りました。 きっこちゃん、やりますねぇ。 もともとしっかり者でしたけれど、すっかりお姉さんというよりは、もはや賢いお母さんという感じです。 きっこちゃんたちは、“ろくすけ”の家で待っていたうりぼうたちのお母さんから、遊んでくれたお礼にたけのこやぜんまい(大好き)をもらって、ひもでんしゃで家に帰りました。 きっこちゃんと“ちい”と“にい”のお話をもっともっと読みたいと思います。 さて、きっこちゃんのお話とは直接関係ありませんが、キツネで思い出したことがあります。 現役時代、授業で“Culture Corner”という時間を作り、ALTに手伝ってもらって、日英の文化比較をしたものでした。 テーマは、“Color”、“School Life”、“Gesture”などなどさまざまで、英語圏代表のALTと、日本代表の生徒全員が、お互いのイメージや知識を発表しあって、文化の違いを探ってみようというコーナーでした。 その結果、生徒たちが、「こんなにも違う」という驚きを体験し、自分たちの文化だけがすべてではなく、世界にはいろいろな価値観や文化があって、それを尊重しながら共存していくべきなんだと気づいてほしいというのが、このコーナーの願いでした。 “Animal”というテーマでやったときのことです。 それぞれの動物に対して持っているイメージを挙げていくと、「キツネ」に対して、日本代表である生徒たちは、「ずるい(ずるがしこい)」、「つり目」、「油揚げ」、「お面」、「だます」、「こわい」といったことばを口にしました。 それに対して英語圏出身のALTたちは、「賢い(スマート)」、「紳士」、「燕尾服」、「赤毛」といったことばを挙げました。 生徒たちにとっても驚きの多い時間でしたが、私自身にとっても、学生の時に文献で読んだ知識を生の人間が証言してくれるわけですから、堪えられないおもしろさでした。 こいでやすこさんの絵本は、第267夜、第277夜、第278夜、第279夜でも紹介しています。 |
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